色彩
■ 19.十三番隊の宴

『今日も楽団の方々が来ているのでしょうか?』
「いや、今日は都合がつかなかったらしい。」
『では、弥彦様。よろしくお願いいたしますね?』
青藍はにっこりと微笑んでいった。
「ははは。私は笛など吹けないよ。」


『まさか。前周防家当主、周防主計殿の実弟が何をおっしゃる。霊王様に楽を奉じる周防家は、代々一本の竹から兄弟で揃いの笛を作るとか。そんなお家にお生まれの弥彦様ならば笛が吹けないなどあり得ません。』
「「!?」」
浮竹と京楽は目を丸くした。


「・・・全く、青藍君はよく知っているね。周防家とのつながりは全て隠したはずなのだけれど。」
『ふふ。主計殿や慶一殿とは顔見知りですからね。まぁ、周防に連なる他の方々も知っておりますが。』
「そういえばそうだった。では、笛が吹けないなどと言っている場合ではないね。主計兄さんたちに怒られてしまう。」


『その主計殿からの伝言もあるのでした。』
「なんだい?」
『「たまには顔を見せなさい。周防との縁は切ったが、兄弟の縁を切った覚えはない。」とのことです。慶一殿とそのお子たちも会いたがっていましたよ。』


「行ったら行ったで迷惑そうにするくせに、素直じゃないなぁ、兄さんは。」
弥彦はそう言って苦笑する。
『ふふ。主計殿のお孫さんたちにも会ってみるといいでしょう。周防家の皆さんは琥珀庵によく顔を見せるそうですよ。まぁ、弥彦様がそれを知らないとは思っていませんが。』


「気が向いたら行かせてもらうよ。兄さん、ずっと私の居場所を探しているようだったから。私の居場所を探るために咲夜殿に見合い話を持っていくぐらいだからなぁ。まぁ、それには失敗したようだけれど。」
『まぁ、そうですねぇ。それはそれで面白い展開になったようですが。』
「違いない。ま、笛の演奏は任せてくれていい。私もそれなりに上手なのだよ。」
『えぇ。期待していますよ。』


その日の夜。
定刻を過ぎ、満月が夜空に浮かぶ頃。
青藍は巫女衣装を着て、舞台の袖に待機していた。
舞台袖から宴の様子を除くと、浮竹、京楽を始めとした隊長格が揃い踏みである。


勿論、白哉と咲夜にルキアも出席している。
烈先生に山本の爺、銀嶺お爺様まで来るとは・・・。
その光景を見て、青藍は苦笑した。
編集部の取材班も待機している。


何処から聞きつけたのか、蓮まで居る。
天音は浮竹たちと談笑しているようだ。
『皆して面白がっているんだから。』
青藍はそう拗ねたように言いつつも、ひとつ、大きく深呼吸をした。


「やぁ、青藍君。緊張しているのかい?」
すると後ろから声が掛かった。
『弥彦様。いいえ。この場の空気を感じているだけですよ。舞にはその場の空気と一体になるものとその場の空気を変えるものがあります。今日は前者ですからね。』
「なるほど。君は、咲夜殿の子だね。もっとも、あの子はそれを呼吸するように感じ取ることが出来るわけだが。」


『えぇ。母上はほぼ無意識にそれをやるので、教わる身としてはコツをつかむのに苦労しました。』
青藍は苦笑する。
「ふふ。そうか。・・・さて、時間だ。お披露目と行こう。」
『はい。よろしくお願いします。』


青藍たちが舞台に出ると、皆の視線が舞台に向けられた。
『本日は十三番隊の宴にお招きいただき、ありがとうございます。お礼と言っては何ですが、舞を披露いたします。拙いものですが、心を籠めて舞わせて頂きます。』
青藍はそう言って一礼する。


『また、本日の演奏は漣弥彦様にお願いいたしました。笛の上手にございますので、ぜひ、耳をお傾けくださいませ。この方を捕まえるのはなかなか難儀するので、今日いらっしゃる皆様は幸運にございますね。』
青藍は笑みを見せた。
「ふふ。この漣弥彦も心を籠めて演奏いたしましょう。」


『えぇ。私も楽しみにしております。』
「私などの笛では青藍様の舞に合いますかどうか・・・。」
『ふふふ。ご謙遜を。では、皆様、ごゆるりと、お楽しみくださいませ。』
青藍が言うと、二人は一礼し、舞が始められたのだった。

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