色彩
■ 18.老獪

『あはは。このお二人、こんなですけど、とても仲の良い夫婦なのですよ。一応言っておきますけど、先ほどの十四郎殿と春水殿の言葉は冗談ですからね?そして、母上を支えてくれる人たちでもあります。』
「私たちでは、大したことは出来ませんけどね。」


『そんなことはありません。お二人には父上を始めとして、朽木家一同、感謝しておりますよ。』
青藍はそう言うと一礼して微笑んだ。
「私は漣家に来てからの方が楽しいからなぁ。」


「そうですよ、青藍様。お礼を言われるほどではありません。むしろお礼を言うべきなのはこちらの方。朽木家の方には咲夜殿をお守りいただき、本当に感謝しております。もちろん、そちらに居られる、十四郎殿、春水殿のお二人にも。」
「はは。俺たちは何もしていないぞ。なぁ、京楽。」
「そうだね。僕らは咲ちゃんのそばに居ただけだよ。友人なら当然のことだ。お礼を言われるようなことじゃない。」


「ふふ。相変わらずのお二人ですね。」
そう言った二人をみて、天音が可笑しそうに笑う。
「そうだなぁ。咲夜殿には本当に良い友人が居られる。青藍君も逞しくなっているようだしな。」
『ふふ。これでも僕は六番隊の第三席ですからね。』
「三席にしておくには惜しいけどな。」


「本当だよねぇ。僕の代わりに隊長の仕事やってみない?」
『嫌ですよ。春水殿がサボりたいだけでしょう。』
「ちぇ。いい案だと思ったんだけどなぁ。」
『僕は父上の下でしか働きません。』
「白哉が隊長をやめたらどうするんだ?」


『それでも僕は隊長にはならないでしょうね。橙晴あたりが隊長になるのではないでしょうか。』
「ははは。橙晴も優秀だからなぁ。」
『えぇ。僕なんかよりもよっぽど優秀ですよ。橙晴の方が父上に似ていますしね。僕は隊長の器ではありませんよ。』


「俺は向いていると思うけどな。青藍は隊士たちにも信頼されているから。」
「そうだねぇ。僕らすぐにでも追い越されそうだよ。」
『僕なんかまだまだです。お二人には敵いませんよ。僕はお二人ほど、老獪ではありませんからね。』


「ははは!確かに。」
青藍の言葉に弥彦は笑い声を上げる。
「老獪って・・・。」
「ははは。否定できないなぁ、京楽。」
「・・・そうだねぇ。」


『ちなみに、そこで笑っている弥彦様も老獪な人の一人ですからね。他人事ではありませんよ。というより、この中では貴方が一番老獪です。』
「え?私も?」
『はい。弥彦様がどれだけの情報を操っているか、知らない僕ではありません。』
「ははは。そりゃあ、参ったなぁ。」
弥彦はそう言って頭をかく。


「ふふふ。流石青藍様ですね。そこまでお見通しでしたか。」
天音は面白そうに言う。
『はい。弥彦様の文の内容が後から噂になって流れてきますからね。全く、怖い人です。』


「なるほど。噂の流れる早さをもう少し考えて文を送らなければならないね。私の読みが甘かったようだ。」
「そのようですね。青藍様に見抜かれては、まだまだ、ということかしら?」
「はは。精進しますよ、当主様。」
「期待しているわ。」
二人はそう言って微笑みあう。


「・・・本当に漣家は敵に回したくないねぇ。」
「はは。そうだな。天音殿も、弥彦殿も味方で良かったよ・・・。」
『僕もそう思います。漣家は貴族とのつながりを持たなくても十分力がありますからね。』
そんな二人を見て、三人は苦笑しつつそう零したのだった。


「そうそう。忘れるところでした。青藍様、これ、お受け取りくださいな。」
天音がそう言って箱を取り出した。
『これは?』
「漣家の巫女衣装にございます。咲夜殿から、今日は青藍が舞うから衣装を用意して欲しいと頼まれまして。青藍様に合わせてお作りいたしました。」


『今日?僕は何も聞いていませんが・・・。』
青藍は首を傾げる。
「そうだった。今日は十三番隊の宴の日だ。漣と朽木がすでに準備をしている。漣が舞うと白哉が文句を言うからな。代わりに青藍が舞うと言っていたぞ。」


『何故僕の居ないところで話が進んでいるのか・・・。』
「あはは。まぁ、いいじゃないの。僕は青藍の舞も好きだよ。」
「えぇ。私も見たいと思っていましたわ。白哉様もこの衣装を着たことがあるのですよ。」
「私も見てみたいなぁ。」


『・・・はぁ。解りましたよ。衣装を用意して頂いた上に、皆さんにそこまで言われてしまっては、断れませんからね。』
皆に見つめられて、青藍はため息を吐きつつ言った。


「流石青藍。」
「いい酒の肴ができたな。」
「今宵は満月ですしね。」
「楽しみだ。」
四人は楽しげに言う。
『春水殿はちゃんと仕事を終わらせてから来てくださいね。』
「あはは・・・。」

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