色彩
■ 16.可愛い家族

「青藍兄様!茶羅は待ちくたびれました!そこに居らっしゃるのでしょう?すぐにいらして。」
隊主室からそんな声が聞こえてくる。
『茶羅・・・。この声は僕の妹の茶羅です。たまに護廷隊に顔を出します。可愛いんですけど、少しお転婆なようで。』
青藍は苦笑しつつ紹介する。


「兄様!聞こえていますよ!茶羅はお転婆じゃありません。それより、茶羅はおなかが空きました!先に食べてしまいますよ。」
『はいはい。ごめんって。すぐに行くから。』
「相変わらずだな、茶羅は。」
恋次もまた苦笑する。


『あはは。これ以上待たせるとへそを曲げられてしまうので、僕はもう行きますね。隊主室には付いてこないように。』
「はい。約束はお守りいたします。」
『ありがと。じゃあ、またあとで。』


あぁ、疲れた。
隊主室に入って青藍は脱力する。
『これが後二日もあるのか・・・。』
「ふふふ。大変だな、青藍。」
青藍の呟きに咲夜が面白そうに笑う。


『あはは。母上は僕の前に姿を見せないでくださいね。いつも神出鬼没なんですから。』
「解っているさ。白哉が拗ねてしまうからな。」
「五月蝿いぞ、咲夜。」
『ふふ。父上、これ、十番隊との合同演習の予定表だそうです。冬獅郎さんからはすでに了承を貰っているそうなので、父上の都合が良ければこれで進めるそうです。』
「そうか。見ておく。」


「お疲れ様です、青藍兄様。今日は茶羅がおやつを作ってきたのですよ。後で食べてくださいね。」
『茶羅が?』
「はい。琥珀庵で燿さんに教えて頂きました。ブラウニーというものです。甘くておいしいの。兄様のはチョコ入りよ。糖分が必要でしょう?」


『うん。ありがとう、茶羅。』
「父上にはほろ苦く作りましたから安心してくださいね。」
「あぁ。頂こう。」
茶羅に差し出された菓子を白哉は微笑んで受け取った。


「もちろん、母上の分もありますからね。多めに渡しておきますから、ルキア姉さまと十四郎殿、それからキリトさんにもよければお渡しください。」
「ふふふ。それは喜ぶだろうな。」
「じゃあ、お昼にしましょうか。」
『そうだね。』


「青藍さん、こちら、問題なく終了しました。」
「こちらもです。」
「三席、全て終わったようです。」
任務に出た青藍たちは問題なく虚の昇華を終えた。


『うん。皆お疲れ様。怪我はない?』
「はい。」
「俺も。」
「私もです。」


『じゃあ、帰ろうか。あぁ、その前に少し休憩しよう。帰ったら書類整理が待っているからね。』
青藍はそう言って笑う。
「「「はい!」」」


「あれ?三席、それ誰かから貰ったんですか?」
「本当だ!誰です?彼女ですか?可愛らしいラッピングですねぇ。」
「青藍さんが誰かから手作りの物を貰うなんて珍しい。いつも断っているのに。」
青藍が取り出したものをみて、隊士たちは珍しそうに言う。


『ふふふ。茶羅は別だよ。』
「へぇ、茶羅さんの手作りですか。」
「あんなに可愛い子の手作りなんて羨ましいですねぇ。」
『うん。・・・あ、美味しい。』


「「「いいなぁ。」」」
三人はそう言って青藍を見つめる。
『・・・そんなに物欲しげな目で見てもあげないよ。これは茶羅が僕のために作ったものだからね。君たちにはさっき買ってあげたお団子があるでしょ。』


「・・・三席、本当に茶羅さんを溺愛していますよね。」
「いや、茶羅さんだけじゃなくて、朽木副隊長もだろ。」
「というか、家族全員では?」
『ふふふ。僕の家族はみんな可愛いからなぁ。』
青藍はそう言って微笑む。


「・・・可愛いって、まさか、朽木隊長も?」
『うん。父上は可愛いよね。』
「いや、あの隊長を可愛いと言えるのは青藍さんと咲夜さんくらいですよ・・・。」
『そうかなぁ。母上や茶羅に振り回されて戸惑っている父上は可愛いよ。あと、ルキア姉さまとの距離感が手探りな感じとか。最近は本当の兄妹のようだけれど。』


「そうか。そう言えば義理の兄妹なんでしたね。」
『そうそう。だからルキア姉さまとは血の繋がりはないけれど、それでも姉さまは僕たちの大切な家族なんだよ。』
「朽木隊長も妹さんのこと大切にしておられますもんね。」


『うん。もちろん、母上もだけれど。母上と姉さまはすごく仲良しなんだよ。たまに父上は放って置かれて複雑な表情をしていることがあるよ。』
「あはは。朽木隊長も大変ですねぇ。咲夜さんと朽木副隊長は浮竹隊長とも仲が良いようですし。」


『確かに。十四郎殿はよく父上に八つ当たりされている。・・・でも、父上は十四郎殿に感謝しているんだよ。母上も、ルキア姉さまも十四郎殿が守ってくれているからね。信頼しているからこそ、二人を十四郎殿の元に置いている。』
「朽木隊長って素直じゃないんですよね。」
『あはは。よく解っているじゃない。でも、それが解ると、父上の八つ当たりなんて可愛いものだよね。』


「いや、斬魄刀まで出されたりすると、こっちは寿命が縮みますけどね・・・。三席が入隊してから、俺たちは本当に助かっていますよ。」
『あはは・・・。いつも両親が悪いね。よし。休憩終わり。帰るよ、皆。』
「「「はい。」」」

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