色彩
■ 10.楼主の目的

「というか、隊長。あの楼主とお知り合いなのですか?」
「楼主?あぁ、長谷川のことか。」
「長谷川?牡丹さんというのでは?」
「ははは。今はそうだな。本名は長谷川一葉という。あれでも、元死神だ。たまに世間話にやってくるんだ。一時期、俺が彼奴の後見人になっていたから。」


『死神時代に、楼閣の護衛を頼まれて、当時の楼主に気に入られて死神を辞めたんですよね?』
「よく知っているな。そうだ。なかなか腕の立つ奴だったから、手放すのは惜しかったんだがな・・・。死神をやっていた時より、今の方が生き生きとしているからな。」
浮竹はそう言って苦笑する。


『あはは。確かに。生き生きしすぎて怖いくらいですよね。僕、あそこに行くと大変なんですよ・・・。父上を籠絡しようとあれこれ聞かれたり、母上を連れて来いと言われたり・・・。特にお酒が入ると大変なんですよね、あの人。』
青藍はそう言ってため息を吐く。


「ははは。確かにそうだな。最近彼奴がここに来るのは漣を一目見ようと企んでいるからだ。さっきも会わせろと言ってきた。丁度漣が居なかったから良かったな。会わせたら白哉になんて言われるか・・・。」
想像したのか、浮竹が小さく震える。


『ですよね・・・。まぁ、母上に似た人を送り込んでも、父上は靡かないと思いますが。』
「だろうな。」
青藍の言葉に、浮竹は苦笑しながら頷いた。


『そもそも、何故あんなに父上を籠絡することに心血を注いでいるのです?』
「楼閣の女が誰一人白哉を落とせないから、彼奴が直々に白哉を落とそうと向かったらしい。だが、白哉は彼奴を一目で見抜いた。それが悔しかったらしいな。」
父上の鋭さが徒になったのか・・・。
青藍は内心苦笑する。


『なるほど。完全に私情なんですね・・・。父上にお金をたくさん使ってもらうのが目的かと思っていましたが。』
「ははは。楼主だからな。そう言う下心もあるにはあるだろう。俺や京楽にも店に顔を出せと五月蝿いからな。行ったら行ったで酒だけ飲んで帰るなと文句を言われるし。」


『十四郎殿は本当に健全ですよね・・・。』
「ははは。青藍もだろう。美人が詰め寄っても顔色一つ変えないと文句を言っていたぞ。」
『姐さんたちは僕の師匠みたいなものですからねぇ。三味線や、笛、箏に歌。色々なことを教えてくれます。その他に色々な情報を集めてくれたりもしますし。色事よりもそちらの方に興味を引かれます。』


「はは。本当に青藍は手強いな。まぁ、仕方ないが。」
『あはは。でも、彼女たちもその位が丁度いいのですよ。おやつを食べたり、お話をしたり。口には出しませんけど、皆、そう言う普通の時間を求めている。僕は、それに付き合っているだけです。』
青藍はそう言って微笑む。


『牡丹さんは不満かもしれませんが、姐さんたちの間では十四郎殿は大人気ですし。だから、たまには顔を出してあげてくださいね。春水殿でも誘って。』
「そうか。考えておこう。」


「帰ったぞ、浮竹。」
浮竹と青藍が話していると、咲夜が姿を現した。
後ろからルキアも顔を出す。
隊士たちは二人に次々と声を掛けた。


「あぁ、お疲れ。任務は?」
「問題なく終わった。これが報告書だ。」
「早いな。今帰ったばかりじゃないのか?」
「ふふん。私とルキアにかかればこのくらい造作もない。」
咲夜は得意げに笑う。


「そうか。報告書に問題はないな。本当に、漣が居てくれて助かる。なぁ、朽木。」
「はい。姉さまが隊士たちを指導してくださるお蔭で、隊士たちも力を伸ばしつつありますし。」
「ふふ。それは皆が努力しているからだ。私の力ではないよ。」
咲夜はそう言って微笑んだ。

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