色彩
■ 8.疑われる

「しろ。」
青藍と白哉が首を傾げていると、少年は白哉を指さしてそう言った。
『「?」』
「しろ。」
二人がさらに首を傾げると、彼はもう一度そう言った。


『しろ・・・。まさか、羽織のこと?かずや君、あれを見たことがあるの?』
「うん。おじちゃん。」
『捜索範囲が広がってしまった・・・。』
青藍は思わず呟いた。


「?」
そんな青藍に少年は首を傾げる。
『あぁ、なんでもないよ。うん。解った。おじちゃんを探しに行こうね。・・・父上、僕ちょっと席を外しますね。』
「あぁ。」


青藍はかずやと手をつないで歩きながら考える。
隊長は十三人。
父上と烈さん、砕蜂隊長は除外するから十人か。
あと、春水殿は羽織の上に女物の着物を着ているから違うだろう。
で、山本の爺をおじちゃんというにはこの子は小さすぎる。


これで残るは八人。
それで、貴族なのは、十四郎殿だけか。
おじちゃんと呼ばれる見た目なのも十四郎殿ぐらいだろう。
青藍はそう思って十三番隊に向かうことにした。
まぁ、もし違っても十四郎殿に預ければ相手をしていてくれるだろう。
そんなことも思いながら。


『六番隊の朽木青藍です。浮竹隊長はいらっしゃいますか?』
十三番隊の執務室の戸を開け、青藍は言った。
「あら、青藍君。」
『虎徹三席。』
「隊長なら雨乾堂よ。でも今日はお客様がいらっしゃるようなの。」


『そうなのですか?それは困ったな・・・。』
「それより・・・その子どうしたの?もしかして!」
『なんです?』
「隠し子!?」
清音はそう叫ぶ。


『うわぁ!?声が大きいですってば!それにこの子は・・・。』
「え!?青藍君の隠し子!?」
「青藍の!?」
清音の叫びを聞いた隊士たちがわらわらと集まってくる。
『皆さん!落ち着いてください!違います!!この子は迷子です!』
その様子に青藍は慌てて叫ぶ。


「きゃー!誰との子です?」
「顔見せて!」
「何ていう名前なの?」
青藍の声が聞こえていないのか、隊士たちは興奮している様子だ。
「え、青藍・・・僕にも隠していたの・・・?」
キリトが涙目になりながら言う。


『だから違うってば!キリト!?違うからね!?この子は迷子!!その辺で拾った迷子なの!!!!』
青藍がそう叫ぶと、隊士たちはピタリと動きを止めた。
『皆さん、解っていただけましたか・・・?』
青藍は息を切らしながら言う。


「・・・なんだ。」
「なぁんだ。つまらないの。」
「面白いと思ったのになぁ。」
「あ、そうなの?」
口々にそんなことを言っては、つまらなそうな表情をする。


『皆さん、酷くないですか・・・。』
「言われてみれば、全く似てないな。」
「確かに。でも、青藍君って怪しいのよねぇ。それだけの容姿で、朽木家の子で、今まで何の噂もないなんて・・・。」
「そうそう。俺だったら遊ぶだろうなぁ。」


「あれ?でも、俺、青藍君、楼閣のあるあたりで見たことありますよ?」
「「「えぇ!?」」」
「青藍、僕らの知らないところで遊んでたんだ・・・。」
キリトがじとりと青藍を見つめながら言う。


『違うよ!?あれは、いつものお礼に琥珀庵のお菓子を持って行っただけで、遊んだりしてないよ。』
「いつものお礼?」
『そうだよ。あの楼閣は貴族の集まる場でもあってね。当主の集まりが開かれたりすると、父上も行かなければならないんだ。その時に楼主が、父上に色々と手回しをしてくれているんだ。』


まぁ、余計なこともしているのだけれど。
誰にも靡かない父上を籠絡しようと、日々作戦を練っているのだ。
「本当にそれだけ?」
『・・・それだけだよ。』


「何その微妙な間。」
キリトが疑わしい目で青藍を見る。
『・・・姐さんの話し相手になったりもする。幼いころから出入りしているから顔なじみが多いんだ。あと、三味線や箏を教わったこともあるかな・・・。』
キリトの視線にたじたじになりながら青藍は言った。


「なんだか、浮気が見つかった夫みたいな反応よ、青藍君。」
そんな青藍をみて、清音まで疑いの目を向ける。
『違いますって・・・。』
「はいはい。子どもに聞かせる話じゃないですからね。君はこっちで遊ぼうね。」
そう言って隊士がかずやを連れて行く。


『ちょ!?誤解です!違いますってば!』
「怪しい・・・。青藍、他に何か隠しているでしょう。」
『隠してないよ。・・・そんな目で見ないでよ、キリト。僕はお菓子を届けるだけだよ。そんなに疑わしいなら蓮に聞いてみるといいよ。大体蓮も一緒に行っているから。』


「じゃあ、後で蓮さんに聞いてみる。・・・嘘ついてたら青藍のこと、嫌いになるからね。」
『えぇ!?嘘じゃないってば!!そんなに疑うなら今度キリトも一緒に行けばいいよ。僕があそこでどんな目に遭っているか解るから・・・。』
青藍はげんなりとしながら言う。

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