色彩
■ 7.迷子

「お前ら本当に鬼だな。睦月以上に。」
師走は恐ろしいものを見るように二人を見つめる。
「そんなことないわよ?好きなだけ師走さんを使ってくれと言ったのは睦月さんですもの。」
「あいつ・・・余計なことを。」


『まぁまぁ。ここで働けるだけ感謝した方がいいですよ。四番隊は人手不足ではありますが、誰彼かまわず受け入れることはしませんからね。睦月が烈先生に話を通してくれたのでしょう。期待に応えなければまた睦月が怒りますよ。』
「そうよ。この程度のことで音を上げないでくさだる?」


「まったくどいつもこいつも手厳しい。」
師走はそう言ってため息を吐く。
『ここは護廷隊ですからね。当然ですよ。』
「仕事をしないのならすぐにでも追い出すわよ。」


『ふふ。雪乃はこう見えても席官だからね。仕事をしないと本当に追い出されますよ。』
青藍は楽しげに師走に言う。
「草薙の一族がどれほど優秀な人なのかは良く知らないけれど、優秀でも使えなければ邪魔なだけだもの。睦月さんは確かに一流だけれど。」


『ちなみに睦月はこの程度あっという間に仕上げますよ。』
「彼奴は草薙の中でも一番の医者なんだぞ?あれと比べられたら俺なんかのろまな亀だっての。大体、俺の専門は麻酔なんだぞ・・・。」
「つべこべ言わすにさっさとやりなさい。それとももっと仕事を増やされたいのかしら?」
「・・・はいはい。やりますよ。やればいいんでしょ。」


そんな会話をして四番隊を出た青藍は、六番隊へと向かう途中で小さな子供を見つけた。
服装からしてどこかの貴族の子だろう。
迷子だろうか?
青藍はそう思ってその子に声を掛けた。


『ねぇ、君、どうしたの?一人?』
「・・・おじちゃん。」
少年は小さな声で泣きそうになりながら言った。
『おじちゃん?おじちゃんと一緒に来たの?』


「ちがうよ。さがしにきたの。でも、いない・・・。」
そしてついに泣き出してしまう。
『あらら。それは大変だ。僕が一緒に探してあげる。だから、泣かないで。絶対に見つけてあげるから。』
青藍は少年の頭を撫でながらそう言った


「ほんと?」
そんな青藍に少年はしゃくりあげながらも顔を上げる。
『うん。僕は青藍っていうんだ。』
「せーらん?」
『そうだよ。君は?』


「かずや。」
『そうか。かずや君か。・・・おじちゃんはどんな人?』
青藍は少年を抱き上げながら言った。
「しろ。」
『しろ?』
「うん。しろいの。」


しろ。
白?
白と言えば・・・。
冬獅郎さんか、十四郎殿か・・・?
『そっか。じゃあ探しに行こうね。』
「うん!」


青藍はとりあえず六番隊に迷子の報告に行くことにした。
そして、六番隊の隊舎に入る。
子どもを抱えた青藍に隊士たちは不思議そうな顔をした。
「三席?その子は?」
『そこで拾ったんだ。』


「え?攫って来たんですか?」
『まさか。迷子だよ。たぶん貴族の子だろうから、父上に見せてみようと思ったのだけれど。』
「あぁ、なるほど。隊長なら隊主室にいらっしゃいますよ。」
『そう。ありがとう。』


『失礼します。』
青藍はそう言って隊主室に入る。
「青藍か。・・・その子どもは何だ?」
白哉は青藍が子供を抱えていることに気が付いて目を丸くする。
『ふふ。僕の子です。』


「・・・は?」
青藍の答えに書類が白哉の手から滑り落ちる。
それを見た青藍は微笑んだ。
「・・・それは真か?相手は誰だ?いつ、その方面の女性不信が治った・・・?」
白哉は恐る恐ると言ったように青藍を見つめる。
その様子に青藍は思わず笑ってしまう。


「・・・?何を笑っている?」
そんな青藍を白哉は怪訝そうに見る。
『ふふ。すみません。その方面の女性不信は未だ継続中です。僕の子どもというのは、嘘です。予想以上の反応だったので思わず笑ってしまいました。』
「・・・質の悪い冗談を申すな。」
青藍の答えに白哉は力を抜いて落とした書類を拾い上げる。


『あは。父上がそこまで焦るとは思わなかったので。』
「それで?その子どもは何だ?」
『迷子のようです。服装からして貴族の子だと思うのですが・・・。父上、見覚えはありませんか?』
青藍に言われて白哉は少年を見つめる。


「・・・ないな。そなた、名は何という?」
「かずや。」
「ふむ。名にも覚えはないな・・・。」
『そうですか。それは困りましたねぇ。』

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