色彩
■ 6.自業自得

『兄貴・・・?』
「兄貴って言ったな・・・。」
睦月の言葉に青藍と咲夜は耳を疑う。
『「全然似てない!!!」』
そして、同時にそんな声を上げた。


「兄貴って言っても異母兄弟だからなぁ。」
驚く二人に師走はヘラりとそういった。
「おい!聞いているのか!?」
悪びれた様子の無い師走を見て、睦月はさらに声を荒げる。
「そんなに怒鳴らなくてもいいだろ。・・・そんなに怒るなよ。」


「・・・お前、暫く、俺の下僕決定。俺に借金を返すまで馬車馬のごとく働かせてやるから覚悟しておけよ。次、逃げるようなことがあればその命なくなると思え。」
睦月はそう言って師走を睨みつける。
「あは、は・・・。」
そんな睦月に師走は乾いた笑いを零すことしか出来なかった。


「邸の前で何をしている。」
そこへ静かな声が掛かる。
『父上!お帰りなさい。』
「お帰り、白哉。」
その声に、苦笑しつつ兄弟げんかを眺めていた二人は瞳を輝かせた。


「あぁ、ご当主。申し訳ありません。」
睦月はそう言って白哉に頭を下げる。
「それは何だ?」
そんな睦月を一瞥して、白哉は師走に目を向けた。


「探し人が見つかりました。」
「なるほどな。ではこれがそなたの兄か。」
「えぇ。不肖の兄ですが。・・・おい馬鹿兄貴。挨拶ぐらいできるだろう。」
睦月はそう言って転がる師走に蹴りをいれる。


「痛い!・・・草薙師走です。弟が世話になっているようで。」
「私は朽木白哉だ。お初にお目にかかる。」
「・・・は?朽木?朽木ってあの大貴族の・・・?」
「そうだが?」
「え?じゃあ、そっちの二人は・・・。」


「私の妻と息子だ。」
「妻?どっちも男だろ・・・。」
「お前、本当に医者か?咲夜さんは女だぞ。一応言っておくが、青藍は咲夜さんとご当主の息子だ。当然、血もつながっている。」


「ご当主・・・ってことは朽木家の当主!?そんでその奥さんと子供!?」
「そうだ。理解できたか?」
睦月が馬鹿を見る目で師走に言う。
「・・・。」
師走は顔を青褪めさせる。


「ふふふ。どうやら私の男装は見抜かれないらしいな。」
それを見た咲夜は満足げに笑う。
『そうですねぇ。お蔭で母上は女性にもモテて大変でした。』
実際は男にもモテていたのだが。
そんなことを言えば、父上の機嫌を損ねてしまうので黙っていることにする。


「こんな格好をしていたら尚更だな。」
『えぇ。女性の店員さんが母上の微笑みにやられていましたし。その他大勢の視線も集めていましたし。父上が母上と外出する際、どれほど気を張っているかよく解りました。苦労していますねぇ、父上は。』
「咲夜だからな。仕方がない。」


翌日。
書類を届けに四番隊に行くと、そこには師走の姿があった。
『あれ?師走さんじゃないですか。・・・やっぱり草薙の人は髪も瞳も緑なんですね。』
「あ?あぁ、お前か・・・。現世では色を変えていたからな。」
青藍にそう答えてはいるが、何やらげっそりとした様子である。


『何でここに居るんです?』
「睦月が此処で働けと。見ろよこれ・・・。この調剤全部俺にやれっていうんだぜ・・・。」
青藍はその処方箋の量を見て苦笑する。


『ご愁傷様です。ま、自業自得ですね。頑張ってください。そうそう、六番隊の常備薬が減ってきたので追加の要請に来たんでした。丁度いいですね。これもよろしくお願いします。』
青藍はにっこりと微笑みながら言った。


「お前・・・見かけによらず鬼だよな。」
『ふふ。そんなことはありませんよ?ね、雪乃?』
青藍がそう言うと雪乃が調剤室に入ってきた。
「さぁ、それはどうかしらね。師走さん、これもお願いしますね。」
雪乃がそう言って書類を差し出すと、師走はうんざりした顔をする。


「もう、嫌だ・・・。」
「四番隊は忙しいのですから。睦月さんの代わりに確りと務めを果たしてください。」
『あはは。雪乃も流石だよねぇ。』

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