色彩
■ 4.お持ち帰り

「お前、こいつの知り合いか?」
一人が青藍にそう問うた。
『えぇ。先ほどから見ていれば、この方にべたべたと触れているようですね。この方にそう簡単に触れるのはあまりお勧めしませんねぇ。』
「そうだ!私が触れることを許した者だけが私に触れていいのだ!」
咲夜はそう言って青藍に抱き着く。


『・・・その発言と共に抱き着くのはやめてください。色々と誤解を生みます。僕にそんな趣味はありませんよ。』
「ふふふ。誤解なら先ほどからずっとされている。」
『まぁ、そうですね。お蔭で何やら面倒なことになっています。ホットドックも紅茶も冷めてしまいますよ。』


「そうだった!私はお腹が空いたぞ。」
『僕もです。という訳でさっさと伸してしまいましょう。』
「そうだな。」
咲夜がそう頷いたと同時に男たちは殴りかかってきた。
青藍はそれを難なく躱す。
咲夜はそんな青藍を軸にして、男の一人を蹴りとばす。


『さすがですね。』
「ふふん。青藍こそ。」
『この程度、僕一人で十分ですからね。後は僕がやります。咲夜さんは離れていてください。貴方に傷一つでもつけたら父上に叱られてしまいます。』
「はぁい。」


咲夜はそう返事をすると、青藍から離れる。
それを追って一人が手を伸ばすが、その手は青藍が叩き落とした。
『あの方に勝手に触れないでいただきたい。簡単に触れていい相手ではないのですよ。』
それを言い終える前に青藍は男の鳩尾を突いた。
男はそれを受けて気を失う。


『さて。あと一人。どうします?この二人を連れて逃げるか、この二人と同じようになるか、選ばせてあげますよ?』
青藍はそう言って微笑む。
「お前・・・何者だ?」
青藍と対峙した男は青藍から目を離さずに言った。


『ただの通行人です。』
「・・・お前、俺と来ない?」
男はそう言ってニヤリと笑う。
『やめてくださいよ。僕にそんな趣味はない。』
この男は他の二人とは違う。
青藍はそう思って男を観察する。


それを見てか、男は青藍に殴り掛かってきた。
青藍はそれを軽々と避ける。
「これも避けるか。」
男はそれを見てさらに楽しそうに笑う。
『五月蝿いですねぇ。それより、あの女性をどうするつもりだったのです?』


「まだ何もしていない。何かするつもりもない。まぁ、あの馬鹿どもは何かするつもりだったようだが。」
言い方からして、この男とあの二人は仲間という訳ではないのか?
『貴方、一体何者です?一般人ではありませんね?』


「俺は一般人だぞ。」
そう言って男が蹴りを繰り出した瞬間、青藍は男の鎖骨あたりにある紋様を見つける。
『へぇ。』
「おい、聞いたのはお前だろう。もう少し興味持てよ。」
『嫌ですよ。面倒くさい。』


「せいらーん。いつまで遊んでいるのだ?」
咲夜が少し離れたところからそう声を掛ける。
『もう少し待ってください。この人、変なんです。』
「あ?失礼な奴だな。」
青藍の答えに男は不満げな声をだす。
そして、拳を繰り出した。
青藍はそれも軽々と避ける。


『危ないですねぇ。話している途中なのですが。』
「青藍、早くしろ。私は飽きた。」
『あー、はいはい。解りました。これで終わりにしますよ。』
青藍はそう言うと男の後ろに回り手刀で相手の意識を落とす。
『まったく、これは持ち帰らなければなりませんね。』
崩れた男をみて青藍はそう呟いたのだった。


「ふふ。お見事。」
男が崩れた様子を見て、咲夜は近づいてくる。
『咲夜さん、これを見てください。』
青藍はそう言って男の鎖骨を指さす。


「これは・・・。」
『えぇ。睦月の探し人でしょうね。この紋様以外にも特徴が一致しますし。』
「道理で見つからないわけだ。こんなところに居たのか。」
咲夜は呆れたように言う。


『とりあえず、この男は縛って持ち帰りましょう。』
「そうだな。・・・縛道の六十三、鎖条鎖縛。」
咲夜が鬼道を掛けた後から、青藍は男を簀巻きにする。
そして担ぎ上げた。


『さて、咲夜さん、とりあえず移動しましょうか。これでは目立ちすぎです。』
青藍はあたりを見回しながら言った。
「あはは。そうだな。ホットドックも冷めてしまったようだし。」
『まったく、僕は大人しく待っていてくださいと言ったはずなんですがね。』
「はは。悪いな。絡まれている女性を見たら体が動いてしまった。まぁ、それを見つけられたのだからいいだろう。」
咲夜は担がれた男を見ながら言った。


『まぁ、それはそうですけど。この人、何故こんなところに居るのでしょうね・・・。』
「さぁな。睦月が珍しく本気で怒っていたからなぁ。とりあえず、私はおなかが空いた。何処か店に入ろう。」
『そうですね。』

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