色彩
■ 1.現世へのお出かけ

『暇だなぁ。』
青藍は珍しく非番が取れたので、暇を持て余していた。
非番であるが、いつも通りの時間に起きてしまったのだ。
朝餉を済ませてしまうと何もやることがない。
今朝は朽木家に居たのは青藍だけだった。
父上と母上、ルキア姉さまは隊舎に泊まったようだし、橙晴は霊術院に居る。
茶羅は友人とお泊り会をやっているらしい。


『書庫の本も読みつくしてしまったし・・・・。何をしよう?』
青藍は縁側で日向ぼっこをしながらそう呟く。
時折、優しい風がそんな青藍の頬を撫でた。
『侑李たちも今日は仕事だっていうしなぁ。蓮は非番だけど、琥珀庵に周防さまがいらっしゃるというし・・・。』


「おや?青藍。今日は非番か。」
そんな青藍に声を掛けるものがある。
『母上?どうしてここに?』
その声の主に青藍は首を傾げた。
「私も非番なのだ。」
咲夜はそう言って青藍の隣に腰を下ろす。


『そう言えばそうでしたね。』
「青藍が非番だなんて珍しいな。」
『あはは。そうですねぇ。まだ一年目ですからね。そう簡単に非番はとれませんよ。でも、父上に働き過ぎだと言われてしまいました。』
青藍はそう言って苦笑する。


「ははは。そうか。あの白哉に言われたか。だが、休養も大切なことだ。若いからと言って無理はよくないぞ。」
『無理はしていませんよ。毎日お昼寝する時間ぐらいはありますしね。仕事も楽しいですから。』
「そうか?」
『はい。それに、急に時間が空くと何をすればいいのか困りますし・・・。』


「それもそうだな。私もこのところ白哉と合わせて非番だったから、白哉が居ないと暇なのだ。・・・そうだ!現世にでも行くか。」
咲夜はいいことを思いついたという風にいった。
『え?』
青藍は首を傾げる。
「ふふふ。暫く行っていないからな。青藍も一緒に行こう。」
『まぁ、いいですけど。ちゃんと父上に連絡を入れてくださいね?』


「・・・私とてそう何度も連絡を忘れるわけではない。」
咲夜は拗ねたように言う。
『その割には何度も父上にお仕置きをされているようですけど。』
「五月蝿いぞ。・・・そうと決まれば、すぐに準備しよう。」
咲夜はそう言って立ち上がる。
青藍もそれに続いて立ち上がった。


「半刻後に穿界門の前に集合だ。」
咲夜は楽しそうにいった。
『はい。わかりました。』


半刻後。
現れた咲夜の姿を見て、青藍は目を丸くした。
『母上、その恰好は・・・。』
青藍と同じく、袴を着ている。
男物ではあるが、違和感がない。


「ふふん。どうだ?似合うか?」
咲夜は得意げに一回転する。
『似合いすぎるほどですけど・・・それ、男装ですよね。』
青藍は呆れたように言った。
「ふふ。いいではないか。」
『まぁ、母上に可愛い格好をされて、後で父上に拗ねられるよりはいいですね。』


「あはは。それでは行くか。白哉には青藍と現世デートに行くと伝えておいた。」
『・・・それ、後が怖いのですが。』
咲夜の言葉に青藍は眩暈を覚える。
「ふふ。この格好ならば文句は言うまい。それから、私のことは咲夜さんとでも呼んでくれ。この格好で母上と呼ばれていたら怪しまれるだろうからな。」


『・・・わかりました。』
青藍の心情を知ってか知らずか、咲夜は楽しそうに微笑む。
それを見た青藍は内心ため息を吐きつつも、苦笑を零して穿界門へと入ったのだった。


『相変わらず、人が多いですねぇ。』
現世へと降り立った青藍は行き交う人々を見てそう呟いた。
「はは。そうだな。しかし、久しぶりだ。青藍、どこか行きたいところはあるか?」
『そうですね・・・。とりあえず、着物は目立つので洋服に着替えませんか?』


先ほどからちらちらと視線を感じる。
現世では着物を着る人は珍しいのだろう。
青藍はそう思って咲夜に提案した。
実際は、彼らが視線を集めている理由は着物を着ているからというだけではないのだが。


「そうだな。私でも着られるものがあるといいが。」
『母上は身長があるので大丈夫だと思いますよ。僕とそう変わりませんしね。』
「こらこら、私のことは咲夜さんと呼べと言っただろう。」
『あぁ、そうでしたね。では、行きましょうか、咲夜さん。』
「そうだな。」

[ prev / next ]
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -