色彩
■ 39.講義の終わり

「まぁ、青藍が言ったことは事実よ。死神として働くことの意味をきちんと考えなさい。死神という仕事をよく知りなさい。そしてよく考えなさい。貴方たちの道はそれだけではないのだから。」
「雪乃が格好いいぞ。」
「いつも格好いいじゃない。」


『それでも死神になるというなら、覚悟をすることだ。戦う覚悟。護る覚悟。命を懸ける覚悟。命を預ける覚悟。死を見る覚悟。あらゆる覚悟をしておくことだ。死神の仕事は優しい仕事でも安全な仕事でもない。』
「青藍がちゃんと三席に見える!」


『酷いよ、キリト。僕は歴とした六番隊第三席だよ。六番隊では父上、恋次さんに次いで三番目に責任があるんだから!』
「普段はそうは見えないけれど。この間、六番隊で青藍が活躍したのよ?朽木隊長を責めた隊士を宥めたんですって。そのあと朽木隊長のフォローまでしたという話じゃないの。」


『何で雪乃がそれを知っているの・・・。』
「治療に来た隊士が話してくれたのよ。四番隊は噂話には困らないの。」
『あはは。そうだったね。でも僕にはそんなことしか出来ないから。まだまだ頑張らなくちゃね。皆も、死神になると決めたなら、一緒に頑張ろうね。君たちが死神となって護廷隊に来るのを楽しみに待っているよ。』


青藍たちはそう言って一礼すると、壇上から降りて、出口へと向かう。
『あ。そうだ。・・・十四郎殿!一緒に帰りますよ。』
青藍が突然そう言った。
すると、ガタリと音を立てて浮竹が現れる。


「隊長!?」
「浮竹隊長!」
「気が付いていたのか。」
『はい。逃げたふりをして霊圧を抑えて鬼道で姿を消したんですよね?最初から最後までばっちりと見えていました。』


「見えていたわけか。流石だな。」
『父上にも見えていたと思いますけどね。ついでに母上の過去を思い出した上に、「あの青藍が成長したなぁ」なんて思って涙ぐんでいたのでしょう。』
「ははは。敵わないな。その通りだ。」
浮竹はそう言って笑う。


『本当に心配性なんですから。』
「はは。あの漣が結婚しただけでも驚きなのに、子どもを産んで、その子どもが立派に育っているんだぞ?俺はそれだけで泣ける。」
『そんなことをしているから、結婚できないんじゃないですか?』
青藍は呆れたように言う。


「余計なお世話だ。最近生意気度が上がっているぞ、青藍。」
浮竹が拗ねたように言った。
『あはは。それはすみませんでした。でも、母上はもう大丈夫です。昔のことを夢に見ることもほとんどなくなっていますから。』
青藍はそう言ってふわりと微笑む。


「お前、そこまで知っているのか・・・。」
浮竹は目を丸くしていった。
『僕はすべて聞きましたから。父上からも母上からも、天音様からも。それに小さい頃は、父上が居ないときにその夢を見た母上に、抱きしめられたりしていました。何かあったことぐらいは幼いころから感じていましたよ。』
「・・・そうか。」


『そのうち橙晴や茶羅も同じ話を聞くでしょう。もう聞いているかもしれませんが。』
「漣を支える人が増えているんだな。」
『えぇ。いつまでも十四郎殿たちだけに任せておくことはしません。だから安心してお嫁さんでも探してください。』
「それとこれとは別だろう。」


『ふふ。雪乃なんてどうですか?十四郎殿が寝込んでいても完璧な看病をしてくれますよ?』
「私!?」
「ははは。こんなおじさんで良ければいつでも。」
浮竹はそう言って微笑む。


「ちょっと、この人本気かしら・・・?私はどうこたえるのが正解なの・・・?」
「隊長も本気か冗談か解らないよね・・・。」
「この微笑みが全てを隠してしまうからね。」
「青藍の微笑みはここからきているのか・・・。」
微笑む浮竹に四人は戸惑った視線を向ける。


『あはは!みんないい反応だよね。』
そんな四人をみて青藍は笑う。
「笑っている場合じゃないわよ・・・。どうしてくれるの。」
『ふふ。冗談だよ。ねぇ、十四郎殿?』
「ははは。そうだな。そんなことになれば俺は卯ノ花隊長に恨まれてしまう。」
「もう、解りにくい冗談はやめてください!」
雪乃はそう言って膨れる。


「すまんな。調子に乗った。これをやるから許してくれ。な?」
浮竹は、お菓子を取り出しながら言った。
「・・・ありがとうございます。」
雪乃はそれを渋々受け取る。
「ははは。可愛いなぁ。」
浮竹はそんな雪乃の頭を撫でる。


「・・・からかってます?」
「おっと、つい、な。嫌だったか?」
「別に嫌ではありませんけど・・・。」
「そうか。それはよかった。」
浮竹はそう言って微笑む。


「・・・青藍が浮竹隊長の微笑みはずるいと言った訳がよく解ったわ。これでは何人の女性隊士が陰で泣いているか解らないわね。」
『あはは。僕なんかよりずっと手強いでしょ?この微笑みに皆騙されているんだよ。』


「おいおい、青藍。俺は騙してなんかいないぞ。人聞きの悪いことを言ってくれるなよ。」
『ふふ。そうでしたか?』
「そうだ!」
そんなことをしながら青藍たちは帰ったのだった。



2016.07.20 入隊編 完
〜成長編に続く〜
青藍は女性不信なので、基本的に女性に厳しいです。
でも、女性死神の皆は尊敬しています。
強いけど弱い、というのが、青藍です。


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