色彩
■ 38.酷い奴ら

「・・・お前、そういう所が怖いんだよ。」
「笑って言うことじゃないよ、それ。」
「うん。脅しっていうんだよ。」
「相変わらず、怖い人。その笑顔、どうにかならないのかしら。」
四人は呆れたように言った。


『ふふふ。死ぬほどじゃなくてもそれなりに大変だよ。死神になって六番隊に入隊して、父上に取り入ろうとした隊士が居たのだけれど、父上に媚ばかり売って仕事を疎かにしたから早々に他隊に飛ばされたよ。それも、隊長副隊長が貴族でない隊にね。そこそこの貴族だったらしいけど。』


「飛ばされたって・・・そんなことあるんだな。」
「昇進とか隊長からの指名で他隊に異動することはあるけど、飛ばされるって珍しいね。」
「朽木隊長も容赦ないのね。」


『当然。貴族ということ以外に価値がないのなら、父上は死神としては認めないよ。』
「で?その人どうなったわけ?」
『すぐに死神を辞めたらしい。せっかく父上がチャンスをくれたのにね。』
「そうね。そこで心を入れ替えて頑張れば認めてもらえたかもしれないのに。」


『そうそう。それに気が付かないなんてかわいそうな人だよね。あ、この場にその人の関係者が居たらごめんね。悪気はないよ。』
青藍はニコリと笑う。


「お前、笑えば何でも許されると思っていないか?」
「青藍、笑って誤魔化すの得意だけどね。」
「その微笑に何人の人が騙されているのでしょうね・・・。」
「実は僕らも騙されていたりして・・・。」
「「「それは怖い。」」」
四人はそう言って軽く震える。


『あはは。酷いなぁ。そうそう。それで思い出したけど、なんか、僕が死神の女性が好みだっていう噂があるらしいのだけど・・・。』
「そうなのか?」
『いや、別に。格好いい女性は好きだけれど・・・。』
「青藍の格好いいって相当だよね。」
「確かに。」


「・・・その噂、心当たりがあるわ。」
『やっぱり朝比奈家のご当主のお遊びだったりする?』
「目星はつけていたのね。・・・たぶんそう。面白がっているのよ。青藍がどうするのか観察しているのではないかしら。お父様はそういう人だもの。」


『ふふふ。この僕で遊ぶなんて剛毅な人だなぁ。ま、別にいいけど。一応言っておくけれど、僕、別に死神の女性が好きなわけじゃないからね?ここにそう言う目的でいる人が居たらごめんね?まぁ、僕がこういったからって死神になるのをやめようなんて考えるような人に僕は興味ないけど。』


「お前って本当に恐ろしいやつ。」
「公衆の面前で振ったね。」
「青藍ってやっぱり大物だよね。」
「えぇ。」


『ふふ。僕で遊んで楽しんだのだから、朝比奈家のご当主にも色々と協力してもらわなくちゃね。お見合いとか。』
「それ、私が協力するっていうのよ・・・。」
雪乃は疲れたように言った。


『いいじゃない。朽木家とお見合いが出来る。それだけでも貴族のステータスになるよ。』
「私にそんなもの必要ないわ。」
『あはは。流石雪乃。でも、雪乃だってお見合い話が沢山来ているでしょう?』
「それなりに。」
『一回お見合いすればしばらくは逃げられるよ?』


「・・・それもそうね。私、死神辞めるつもりはないし。いちいち断るのも面倒なのよね。」
『でしょう?だから逃げ切れなくなったら協力してね。』
「もちろん、青藍も協力してくれるのでしょう?」
『ふふ。いいよ。』


「君たち、そう言う話を公衆の面前でするのやめない?」
京は呆れたように言う。
「あら、いいじゃない。これで私たちにその気がないというのが解ってくれると嬉しいのだけれど。」
「本当の目的はそっちか。」


『ふふ。当たり前でしょ。お見合いって一回だけでも面倒なんだから。』
「そうよ。あんなに着飾るのは嫌よ。重くて仕方がないんだから。」
『お見合いしたことあるんだ?』
「当たり前よ。私には婚約者が居たのよ?誰かさんのお蔭で婚約破棄になったけれど。」


『あは。そうでした。でも、雪乃はそれで得をしたでしょう?』
「そうね。身も心も自由になって清々したわ。」
「こいつら、割と酷い奴だよな・・・。」
「うん・・・。」
「そうだね・・・。」


『あはは。・・・さて、話が逸れてしまった上に、そろそろ時間だ。聞いてくれてありがとう。役に立ったかは解らないけど。』
「とりあえず、青藍が一番怖いってことは伝わったと思うよ。」
「そうね。それが一番大切なことだわ。」


「確かに。死神として生きるにも、貴族として生きるにも、青藍を敵に回すべきではないし。」
「そうだな。それが一番大事だ。」
『ちょっと、皆して何なのさ・・・。』
青藍は少し落ち込む。

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