色彩
■ 31.困った保護者たち

「漣・・・。」
「・・・何だ?」
「帰ろうか。」
「そうだな・・・。」
二人はそう言ってくるりと踵を返す。


『もう遅いと思いますけどね。朽木家の情報網の情報伝達速度は刑軍のそれと遜色ありませんから。それに、父上は、すでにこちらに向かってきているようです。』
青藍はそう言って楽しそうに微笑む。
「浮竹。」
「漣。」


「「逃げるぞ!」」
二人はそう言って駈け出す。
しかし、時すでに遅し。
会場の出入り口にはすでに白哉の姿があった。


「・・・咲夜。浮竹。」
その白哉の声に咲夜は思わず浮竹を盾にして後ろに隠れる。
「や、やぁ、白哉。元気か?」
浮竹が恐る恐る声を掛ける。


「浮竹、それを渡せ。」
浮竹の問いに答えることなく、白哉は静かに言った。
青藍はその様子を平然と見つめている。
他の者たちは橙晴を除いて恐怖に身を凍らせているのだが。


「ははは・・・。漣、すまん。」
浮竹はそういって咲夜を捕まえると白哉の方に投げつけて逃げ出した。
「ちょっと!?浮竹!!裏切り者!!」
そんな浮竹に咲夜は叫びを上げるもすでに浮竹の姿はなく。
咲夜は白哉に捕えられていた。


「・・・ずいぶんと楽しそうなことをしているではないか。」
咲夜を捕えたまま白哉は言った。
「あ、はは・・・。」
そんな白哉に咲夜は表情を引き攣らせる。


「一体いつになったら学習するのだろうな?」
「・・・ごめんなさい。二度とやりません。」
「私は毎回その言葉を聞いているのだが。」
「あはは・・・。」
「嘘を吐く口など塞いでやろうか。」
白哉はそう言って咲夜の顎を持ち上げる。


「ひ、うわ!待て!落ち着け!」
そして咲夜に顔を近づける。
咲夜はその唇を手で塞いだ。
白哉はそんな咲夜に不満げな視線を向ける。


「・・・何をする。」
白哉は自らの口を塞いだ咲夜の手を口から剥がしながら言った。
「いや、それはこっちの科白だ。何をしようとしているのだ。」
咲夜はジタバタともがきながら言った。
「何ってせっぷ・・・。」
「うわぁ!言わなくていい。言わなくていいぞ。うん。落ち着け。」


「十分落ち着いている。・・・それで?何か言うことがあるだろう。」
「う・・・ごめんなさい。もうしません。二度と。」
「それは先ほど聞いた。他にあるだろう?」
「他・・・?何かあったか・・・?」
白哉の言葉に咲夜は首を傾げる。
「ほう。解らぬか。・・・仕置きだな。」
白哉はそう言って妖艶に微笑んだ。


『・・・父上、楽しそうだなぁ。』
青藍はそう暢気に呟く。
「いやいやいや。青藍、あれ、止めなくていいのか?」
「うん。なんていうか・・・僕らには刺激が強すぎるのだけど。」
『あはは。あれ、通常運転だよ。』


「「「「そう言えばそうだった・・・。」」」」
四人は薬を口移しで飲まされていた咲夜を思い出す。
『ふふふ。いつも通りのことなので皆さんもお気になさらず。これを見て、父上に側室を娶ることを勧めるのはやめてくれると助かる。貴族の皆、ご当主とかに伝えておいてね。父上の機嫌を損ねてしまうから。』
青藍はついでに会場内の院生たちにもそう声を掛ける。


「まだそんな猛者が居るのね・・・。」
『そうなんだよ。あの二人の間に入ることなんてできないだろうに。』
「つか、朽木隊長、怒ってんだよな・・・?」
『まさか。母上と十四郎殿は気が付いていないようだけど、父上は僕を見に来たついでに母上をからかっているのさ。母上が僕の所に姿を見せるのは父上の想定の範囲内だろうし。ね、ルキア姉さま?』


「はは。そのようだな。朽木家の情報網は侮れないが、それにしても来るのが早すぎる。もともとこちらへ向かっていたと考えるのが妥当だろう。」
『ね?だから、あれは父上のお遊び。貴族の子弟への牽制も含まれてはいるだろうけど。』
青藍はそう言って面白そうに笑った。
それが解っているのか、橙晴も呆れたように笑っている。


「それにしても、お前はあれを見て育ったのか・・・。」
「そりゃあ、口説き文句のような言葉がスラスラ出てくるわけだよ・・・。」
「なるほど。あれは父親譲りなのね。」
「青藍もああなるのかな・・・。」
「「「それは怖い。」」」

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