色彩
■ 30.噂をすれば

「次は十三番隊だね。隊長は浮竹十四郎。副隊長は朽木ルキア。青藍のお姉さんだね。それから、青藍のお母さんである、朽木咲夜さんが居るのも十三番隊だよ。」
『十三番隊は十四郎殿の隊って感じだよね。』
「ふふ。そうかも。隊長は病弱だけど、あったかくて大きな人なんだ。いつも朗らかに笑っていてね。凄く安心する。」
キリトはそう言って笑う。


「十三番隊の仲の良さは有名だよね。それからみんな浮竹隊長が大好きっていうね。」
「そうそう。虎徹三席と小椿三席の浮竹隊長好きも有名だな。」
「それから、咲夜さんと浮竹隊長の言い合いも有名よね。」


『あはは。ルキア姉さまは何時も大変そうだよね・・・。あの二人、同期でとっても仲が良いから。父上が嫉妬するくらいに。お蔭で僕は十三番隊に呼び出されたりするんだよ。』


「うん・・・。青藍いつもありがとう。青藍が仲裁に入ってくれなければ十三番隊の隊舎はボロボロになるところだよ。」
キリトは苦笑していった。


「せいらーん!」
そんな話をしている時だった。
そう言って青藍に飛びついてきたものが居る。
「・・・噂をすれば、ってやつ?」
「あはは。来ちゃうんだ・・・。」
「来ちゃったね・・・。」
「流石というか何というか・・・。」
四人は呆れつつ言った。
最前列に居る橙晴もまた苦笑している。


『・・・母上。』
「やぁ、青藍。母上が見に来てやったぞ。」
『誰も頼んでいませんよ。まぁ、大人しく何もしないという期待はしていませんが。』
「なんだ?予想通りか?」
『えぇ。来るだろうとは思っていましたよ。こんなに堂々と来るとは思いませんでしたけど。』


「おーい、漣。先に行くなよ。」
そんなのんきな声まで聞こえてくる。
その姿を捉えた院生たちに大きなざわめきが起こった。
『十四郎殿まで来たんですか・・・。』
青藍は頭を抱えたくなる。
「すまぬ、青藍。私だけではお止め出来なかった・・・。」
浮竹の後ろからは何かを諦めたような顔をしたルキアが現れる。


『ルキア姉さま・・・。苦労を掛けます。』
「はは。この位構わぬ。」
「朽木副隊長、お疲れ様です。」
「キリトか。ちゃんと話せているか?」
「はい。なんたって、青藍が居ますからね。」
「はは。そうか。」


『・・・母上、とりあえず離してください。』
「えー。」
抱き着く咲夜を引きはがそうとする青藍に咲夜は不満げな声を上げる。
『母上、ここには貴族の子弟が沢山いるんですから。このような姿を晒すわけにはいきません。』
「いつものことだろう。堅苦しいな。それに可愛い息子に抱き着いて何が悪い!」


『駄々をこねないでください。父上に嫉妬されるのは僕なんですから。寿命が縮みます。抱き着きたいのなら十四郎殿にでも抱き着いていてください。』
「おい、青藍。俺の寿命を縮める気か。」
『そう簡単に死ぬ十四郎殿じゃないでしょう。』
「ははは。確かに。」
「お前らなぁ・・・。」


「まぁ、青藍の機嫌を損ねるのは私の本意ではないからな。このくらいにしておこう。」
咲夜はそう言って漸く青藍を解放する。
『それで?三人揃って来たようですけど、十三番隊は大丈夫なのですか?』
「私が三日分くらい働いたからな。大丈夫だ。」
「そうそう。腕が見えないくらいの速さで書類を捌いていたな。」
「久しぶりに姉さまの本気を見ました。」


『・・・こんなことのために本気を出さないでくださいよ。』
青藍は呆れたように言った。
「ふふふ。面白そうだからな。」
『ちゃんと父上に言ってきたのでしょうね?』
「・・・あはは。」
青藍の言葉に咲夜は固まる。


『お仕置き決定ですね。お疲れ様です。』
そんな咲夜を一瞥して青藍は楽しげに言った。
「そんな!青藍、白哉の味方をする気か!?」
『僕は何時だって父上の味方ですよ。それに、母上の学習能力がないだけです。父上は本当に苦労しますねぇ。』
「ははは。大変だな、漣。」
浮竹はそう言って笑う。


『十四郎殿も笑っている場合じゃありませんよ。この場合、父上の八つ当たりを受けるのは貴方でしょうから。』
青藍の言葉に浮竹も動きを止めた。
「ははは・・・。」
そして乾いた笑い声を出す。

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