色彩
■ 22.鎮魂の舞

その日の夜。
月が夜空に輝いている。
その月光の下で青藍は舞を舞っていた。
殉職した部下のために。


彼の魂よ、安らかに眠れ。
僕は君を忘れない。
君を背負って生きていく。
僕にその死が訪れるまで。


どうか、心安らかに。
君の心は僕が預かる。
命を終えた寂しさも、まだ生きたいと願う心も、残された者への未練も全て。
さようなら。
また会う日まで。
そんな祈りをのせて、青藍は音もなく静かに舞っていた。


静かに舞う青藍を咲夜はこっそりと見つめていた。
鎮魂の舞。
これは咲夜が教えたものだ。
昔は舞うだけで精一杯で、思いをのせて舞うことなどできなかったのに。
見ているだけで心が伝わってくる。
一つ一つの動きに祈りが込められているのが解るのだ。


何時の間に、これほど大きくなったのだろう。
体だけでなく心までも。
まだまだ子供だと思っていたのに。
そう思って咲夜は内心苦笑する。
なんだか、年寄りのような思考をしているな。
実際、若くはないのだが。


「ふふ。子どもの成長とは嬉しいものなのだな。・・・そうは思わないか、白哉。」
咲夜が名を呼ぶと、白哉が姿を見せる。
「気づかれていたか。」
「まぁな。」
「・・・今日、あれに叱られた。」


「ふふ。白哉を叱るようになったか。」
「そのようだな。」
白哉はそう言って苦笑する。
「私も最近、叱られる。青藍は良く人を見抜くな。」
「そうだな。今日、すべてを見抜かれていて驚いた。」


「私たちは青藍の成長を見抜けていなかったというのに。これではどちらが親だか解らないな。」
咲夜はそう言って笑う。
「笑い事ではない。・・・だが、お蔭で楽になったのも事実だ。」
そう言って青藍を見つめる白哉は柔らかな表情をしている。


「そうか。」
それを見た咲夜もまた柔らかく微笑む。
「あれは、すでに私など超えているのかもしれぬ。」
「ふふ。そうかもな。」
「少し泣き虫だがな。」


「あはは。それは誰に似たのだろうなぁ。」
「解らぬ。少なくとも私たち二人ではないな。」
「まぁ、可愛げがあっていいじゃないか。なかなか泣けない私や君の代わりに泣いてくれるのだ。私は、それが、少し嬉しい。」


「あぁ。いつの間にか、青藍に支えられているのだな・・・。そんなことは言ってはやらぬが。」
白哉はそう言って悪戯っぽく笑う。
「ふふ。私もだ。・・・まだまだ成長するよ。あの子は。心も体も。」
「そうだな。」


「これからも見守ってやらねばな。白哉が負ける日も近いかもしれないなぁ。」
咲夜はからかうように言った。
「まだ負ける気はない。あれは私を目標にしているのだからな。」
「ふふふ。負けず嫌いだな。」


「当然だ。」
そう言い切る白哉に咲夜は微笑んだ。
「・・・そろそろ帰ろうか。見つかったら文句を言われるだろうから。」
「そうだな。」
そう言って二人はこっそりとその場を離れたのだった。

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