色彩
■ 20.死神としての覚悟

白哉が去ったことで執務室に静寂が訪れる。
「なぜ・・・・何故彼奴が・・・。隊長は、何故何もおっしゃらないのですか。俺たちは、隊長にとってその程度のものですか・・・。」
隊士はそう言って泣き崩れた。
青藍はそんな隊士の方に手を置いた。


『それは絶対に違うよ。』
「でも!あの方は表情一つ変えずに・・・。」
『そんなことはないよ。』
「ですが三席、隊長は先ほど言いたいことはそれだけかと・・・。」
見ていた隊士の一人がそんなことを言った。
他の隊士たちも気まずそうに俯く。


『うん。それは僕も聞いた。』
「あの言葉は、そう言うことでしょう?僕ら隊士を切り捨てたのでしょう?」
『違うよ。あの言葉はね、好きなだけ自分を責めていいって意味だよ。言いたいことを自分に言って、それで気が済むなら、それが君のためになるなら、それを引き受けると。言葉が少ないだけで、父上にはそのくらいの覚悟があるよ。だから、決して隊士を切り捨てたわけじゃない。』
青藍は隊士たちに言い聞かせるように言った。


「でも・・・。」
『納得がいかないこともあるだろう。だけど、父上はちゃんと悲しんでいるよ。隊長には責任がある。今日の任務にその人を行かせたのは父上だよ。その任務で誰かが命を落としたなら、それは隊長の責任なのだから。父上は、それを解っている。そして、父上は隊士たちを大切に思っているよ。一人でも命を落とせば、父上はそれを悔いて、自分の責任だと、その人の命を背負うんだ。・・・普段、君たちが見ている朽木隊長はそれが出来ない人かい?』
青藍は隊士たちに静かに問うた。


「・・・昔、自分の仲間が殉職したとき、隊長は、その仲間の両親のもとへ謝罪に行ったそうです。すべては自分の責任だと。親子の時間を奪ってしまって申し訳なかったと。自分はそこまでしてくれる隊長が、隊士たちの死をなんとも思わないとは、思いません。」
隊士の一人がそう言って話し出す。


「俺も、死んだ同期がいる。毎年、お盆の時期になると、そいつの墓には花が手向けてあるんだ。ずっと、誰が手向けているのか、解らなかった。だが、ある時、それは朽木隊長だったと知った。俺は、嬉しかった。隊長は遠い人だが、俺たちをちゃんと見ていてくれる人なのだと。」


「隊長は不器用な人なんですよね。」
「そうだな。言葉も足りないしな。俺も、隊長の本意に気が付くことが出来たのは最近だ。」
隊士たちはそう言って白哉について話し始める。


『今は、解らなくてもいい。でも、少しずつ、父上のことを解ってもらえると嬉しい。』
青藍は未だに涙を流す隊士にそう言った。
「・・・はい。」
『悲しいのは僕らも一緒さ。君一人で悲しまないでね。それでは君が壊れてしまう。僕はね、隊士たちが不安ならば、その不安を取り除きたいし、悲しいなら悲しさを分かち合いたい。だから一人で悲しまないでほしい。』
「はい。」


『僕も一緒に悲しむよ。悔しいよ。だけど、僕は六番隊第三席。悲しんでばかりは居られない。それでは死んだ部下に申し訳が立たない。三席になれと言われたとき、僕は死んでいった者たちの命を背負うと覚悟を決めたんだ。』
そう言い切った青藍に、隊士たちは彼の覚悟を感じ取ったのだった。
そして、その父親である白哉がその覚悟が出来ない人だとは思えなかった。


「・・・俺、隊長に酷いことを言いました。」
『気にしなくていいよ。言葉が少なすぎる父上だって悪いのだから。』
「でも・・・。」
『悪いと思うなら、後で父上に謝ればいい。父上は、その必要はない、とでもいうだろうけど。』
青藍はそう言って微笑む。


『・・・さて、皆仕事に戻ろう。これ以上手を止めていては残業になってしまうよ。』
「「「はい。」」」
青藍の言葉に隊士たちは動き出す。
『君は、今日はもう帰っていいよ。大切な人を失ったんだ。少し休んだ方がいい。』
「はい。ありがとうございます、三席。」
『いいんだよ。僕にはその位のことしか出来ないからね。』
そう言った青藍に一礼して彼は帰って行った。

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