色彩
■ 19.殉職

「青藍に、ルキア、おはよう。」
そんな話をしていると、咲夜が顔を出した。
「咲夜姉さま、おはようございます。」
『おはようございます、母上。』
「橙晴と茶羅は起きていましたか?」


「あぁ。さっき起きたようだ。白哉が来たら先に食べ始めてしまおう。あの二人を待っていたら遅刻してしまうからな。」
咲夜はそう言って苦笑する。
『ふふふ。困った子たちですねぇ。橙晴は霊術院の授業に間に合うのやら・・・。』


「はは。そうだな。ま、授業など二の次でいいだろう。橙晴には不要なものだ。」
『そうですね。僕もそうでしたし。橙晴は僕よりも授業に出ていて偉いと思います。』
「そうだな。青藍は午前中ほとんど護廷隊に居たからな。」
『ふふ。橙晴もたまに顔を出しますけどね。』


そこへ白哉が姿を現した。
白哉が現れると同時に朝餉も運ばれてくる。
「兄様、おはようございます。」
『おはようございます、父上。』
「あぁ。おはよう。・・・橙晴と茶羅は?」


『今日も遅いようなので先に食べてしまいましょう。』
「そうか。」
「双子の寝起きの悪さは白哉に似たのだろうな。」
咲夜はそう言って笑う。
「・・・五月蝿いぞ。」
白哉は否定できないのか、拗ねたように言った。


『ふふ。』
そんな姿に青藍は笑みを零す。
「・・・何を笑っているのだ。」
それをみた白哉は不満げだ。
『父上にも可愛らしいところがあるのだなぁと思いまして。』


「ふふふ。よく解っているじゃないか、青藍。」
『母上が父上を可愛いという理由が分かりました。』
「・・・。」
青藍の言葉に白哉は沈黙する。


「あはは。さすが青藍。私の子だ。さて、食べようじゃないか。ね、白哉?」
「・・・あぁ。頂こう。」
『「「いただきます。」」』
四人はそう言って朝餉を摂り始めた。


朝餉を終え、青藍たちは漸く起きてきた橙晴と茶羅に見送られて邸を出た。
途中でルキアと咲夜と別れ、今は白哉と共に六番隊舎へと向かっている。
『父上、そう拗ねないでくださいって。』
白哉は青藍に可愛いと言われたことを未だに気にしているらしい。


「拗ねてなどおらぬ。」
どう見ても拗ねているじゃないか・・・。
そんなことを内心で思いつつ、青藍は白哉に付いて行く。
『父上。』
「・・・何だ?」


『拗ねている父上も可愛いですよ。』
青藍はそう言って微笑む。
その表情が咲夜によく似ていて、白哉は少し驚く。
・・・これでは、敵うまい。
内心でそう思って、白哉は拗ねるのをやめたのだった。


「・・・言いたいことはそれだけか。」
青藍が副隊長会議から帰ってくると、執務室からそんな白哉の声が聞こえてきた。
父上の声が硬い。
何かあったのだろうか?
青藍はそう思って執務室へと足を踏み入れる。


「隊長は、隊長は一隊士が死んでもなんとも思わないのですか!!!」
ある隊士が白哉にそんな言葉を叫んだ。
それでも白哉は表情を変えない。
青藍は白哉の様子を伺う。
・・・そうじゃない。
白哉の瞳を見て、青藍はそう思った。


『何があったのですか?』
青藍は近くに居た隊士に聞いた。
「それが・・・。任務に出た隊士が殉職したのです。彼は、その隊士と仲が良かったものですから・・・。」
『そうか。』


青藍は殉職した隊士の顔を思い出す。
暇なときには、休憩がてら青藍とお茶を飲んだこともある。
解ってはいた。
僕らは死神なのだ。
命を懸ける仕事なのだ。


これは、青藍にとって初めての部下の殉職だった。
心臓のあたりが痛い。
だが、もっと心を痛めている人が居る。
独りでその痛みを抱えさせてはならない。
青藍はそう思って白哉と隊士の間に入って行く。


『その辺にしなさい。』
「でも!!!」
青藍が止めても隊士は気が収まらないらしい。
『父上、仕事にお戻りください。今日は恋次さんが居ないのですから。』
そう言った青藍を白哉は無言で見つめる。


青藍は任せてほしいとその瞳に訴えた。
それを読み取ったのか、白哉は背を向けて隊主室へと向かう。
「隊長!!!なぜ、何故、彼奴だったのですか!!」
そんな白哉の背中に隊士は叫ぶ。
それでも白哉は立ち止まることはなかった。

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