色彩
■ 18.朝の風景

翌日。
青藍はいつもより早い時間に目が覚めた。
昨日は久しぶりの一家団欒の時を過ごして、ゆっくりとすることが出来たからだろう。
青藍は布団から出ると、戸を開けた。
昇ったばかりであろう朝日が庭の木々を照らしている。
朝露が光を反射してあちらこちらがきらきらと輝いていた。


『今日もいい天気だ・・・。』
青藍はそう呟いて深呼吸をした。
朝の澄んだ空気が体に満ちるようである。
耳を澄ますと、邸の者たちが働き始めているのか人の動く音がする。


それを聞いた青藍は微笑み、その者たちに感謝した。
自分たちが何不自由なく暮らせているのは邸の者たちのお蔭でもあるのだ。
だから、青藍は朽木家で働く者たちのことも好きなのである。
そしてそんな青藍は、邸の者にも愛されているのだ。


「青藍様。おはようございます。」
青藍が縁側で庭を眺めていると、使用人が現れた。
彼女は佐奈。
青藍付きの使用人である。
いつも青藍が目を覚ますとすぐにやってくるのだ。
どうやってそれを知っているのかは未だに青藍には教えてくれないのだが。


『おはよう、佐奈。』
名を呼ばれた佐奈は嬉しそうに微笑んだ。
「今日は特にお早いですね。」
『うん。目が覚めてしまってね。でも、朝餉は皆と同じ時間でいいよ。』
「はい。畏まりました。」


『ねぇ、佐奈。』
「なんでしょうか?」
『佐奈は朽木家が好き?』
「唐突ですねぇ。佐奈は朽木家が好きですよ。」
『本当?』


「えぇ。青藍様を始め、朽木家の方々は使用人の名まで覚えておいでです。名を呼ばれるのは嬉しゅうございます。」
佐奈はそう言って微笑む。
『それは当たり前のことではないの?』


「はい。前の家の方は使用人の名など覚えては居られませんでした。他の家の使用人ともお話しする機会がありますが、どの家も家人が全ての使用人の名を覚えているのは珍しいようでございます。」
『そうなんだ。使用人が居なければ、ほとんどの貴族は生活することすらままならないだろうに、変な話だねぇ。』


「ふふふ。青藍様はお優しいのですね。」
『そうかな・・・。だって、使用人だからと言って礼を欠いていいわけじゃないでしょう?僕らのために働いてくれているのだから、名前を覚える位当然だよね。そう楽な仕事でもないわけだし。佐奈だって、毎日早起き大変でしょう?いつもありがとう、佐奈。』
青藍はそう言って微笑む。


「青藍様がそのようにお言葉をかけてくださるから、佐奈は頑張れるのですよ。そのお言葉だけで佐奈は青藍様のために頑張ろうと思えます。」
『ふふ。そう言ってもらえると僕も嬉しいな。・・・さてと、着替えて散歩でもしようかな。佐奈、死覇装をお願い。』
「はい。畏まりました。」
佐奈はそう言うと青藍に軽く礼をして立ち上がり、死覇装を取りに行ったのだった。


朝の散歩を終え、青藍が朝餉の席に行くと、すでにルキアが居た。
『姉さま、おはようございます。』
「おはよう、青藍。ずいぶんと早起きだったようだな。」
『目が覚めてしまいまして。佐奈と話などしておりました。』
「そうか。」


『他の皆は?』
「兄様と姉様はすでにお目覚めだ。すぐに来るだろう。橙晴たちは先ほど私が起こしたが・・・まだ、眠っているのかもしれぬな。」
ルキアはそう言って苦笑する。
『ふふ。双子はお寝坊さんですからね。』
青藍は面白そうに笑った。


『姉さま、今日のご予定は?』
「今日は書類仕事だ。明日は任務があるからな。今日は隊舎に泊まる。」
『そうですか。』
「青藍は?」
『今日は恋次さんが非番なので、僕も書類仕事が沢山あるでしょうね。帰りが遅くなるようだったら隊舎に泊まります。』


「そうか。恋次は非番なのだな・・・。今日は副隊長会議があるというのに。」
『副隊長会議は僕が代理で伺います。』
「ふふ。そうか。よろしくな。」
『はい。・・・姉さまはちゃんと休憩を忘れずに取ってくださいね?隊士たちも心配していましたよ。』
「・・・善処する。」

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