色彩
■ 12.お手伝い

「・・・もうすぐ定刻だな。お前ら、その書類届け終わったら各自解散でいいぞ。」
恋次の言葉に隊士たちは動き出す。
『あ、十三番隊への書類は僕が届けるよ。十四郎殿のお見舞いに行くから。ルキア姉さまも今日は邸に帰られるという話だし。』


「迎えに行くわけか。お前も過保護な奴だぜ。ルキアはそんなに弱くないっての。」
恋次は呆れたように言った。
『女性を家まで送るのは男として当然の義務ですよ。』
「そんなこと、お前はルキアにしかしないだろうが。」


『ルキア姉さまは特別です。それに、遅くまで残っていた女性隊士だって朽木家の者に家まで送らせています。』
「つまり、お前が自分で送るのはルキアだけってことじゃねぇか。」
『五月蝿いですね。いいでしょう別に。同じところに帰るのですから。』


「ふふ。相変わらずのようですね。では、これ、よろしくお願いします。」
二人の言い合いに笑いつつ、隊士は青藍に書類を差し出す。
『任せて。お疲れ様。』
差し出された書類を受け取りながら青藍は言う。


「副隊長たちもお疲れ様でした。」
「おう。明日もよろしくな。」
「「「はい。」」」
そう返事をすると、隊士たちは執務室を出て行ったのだった。


『失礼しま・・・す?』
青藍が十三番隊の執務室に入ると、そこもまた書類であふれていた。
「あ、青藍君。」
『虎徹三席。これは一体・・・?』
「あぁ、十一番隊の書類が回ってきたのよ。今日、隊長は調子が悪いし、咲夜さんは非番だからまだ終わらなくて・・・。副隊長が頑張ってくれては居るのだけど。」
清音は困ったように言った。


『そうですか。お忙しいところ悪いのですが、これ、六番隊からの書類です。こっちも十一番隊のものなのですが。』
「全く、十一番隊はどんだけ書類溜め込んでんのよ!」
清音は叫ぶような声で言った。


『あはは。僕、手伝いますよ。六番隊はもう上がりなので。ルキア姉さまも待つつもりですし。』
「ほんと!?」
青藍の言葉に清音の目が輝く。
『えぇ。いいですよ。』
「悪いわね。じゃあ遠慮なく手伝ってもらうわ。これと、これと、これ。よろしくね。そこの机使っていいから。」
清音はそういって書類の山を三つほど机の上に置いた。


『あは。本当に遠慮がないや。』
「遠慮しないって言ったでしょ。ほら、早くやる!」
『はい。・・・ま、頑張りますか。』
十四郎殿のお見舞いはこれが終わってからにしよう。
青藍はそんなことを思いながら筆をとり、書類の処理を始める。


「・・・あぁ、やっと終わったわ。」
暫く経って清音は筆をおくと力尽きたように机に突っ伏した。
『あはは。お疲れ様です。こっちももう終わりますよ。』
「あら、流石青藍君。早いのね。うちの隊に欲しいくらいだわ・・・。」


『ふふ。十三番隊には母上が居るでしょう。母上は隊の三日分の書類を数刻で処理してしまう人なんですから。』
「そうね。今日も居てくれたら助かったのだけれど。せっかくの非番を潰してしまうのもね・・・。朽木隊長が非番を取られるのは珍しいから。」


『ふふ。お気遣いありがとうございます。あとで朽木家から何か差し入れましょう。』
「ありがと。」
『いえいえ。お互い様です。・・・こっちも終わりました。』
青藍はそう言って筆をおく。


「お疲れ様。・・・字がとっても綺麗だわ。六番隊からのこの綺麗な字の書類は青藍君だったのね。」
青藍の書類を見て清音が言った。
『ふふ。字の書き方は父上から教わりましたからね。』


「なるほどね。咲夜さんの字も綺麗だけれど、青藍君の字も綺麗だわ。」
『ありがとうございます。』
「ここでちょっと待っていて。今お茶淹れてくるから。副隊長ももうすぐで終わると思うわ。」
『はい。』


お茶を待つ間に青藍は橙晴に連絡を入れた。
今日は両親ともに非番で、ルキア姉さまも自分も邸に帰るのだ。
橙晴を呼べば、家族全員が揃う。
『・・・ふふ。』
橙晴からすぐに帰ると返信が帰ってきたのを見て、青藍は思わず笑ってしまった。


本当に、僕ら兄弟は家族が好きなのだなぁ。
そんな共通点を見つけて可笑しくなる。
さらには、橙晴もまた、行く必要のない霊術院に行っているのだ。
それも、朽木の名を伏せ、名前まで変えて。
橙晴の髪と瞳は白哉に似たため、姿を変えてはいない。
橙晴は貴族に顔を見せることがないからそのままでも気付かれていないらしい。


僕の同期には顔が知られているけれど。
その代り、茶羅が貴族の集会によく顔を出している。
橙晴は今のところ首席で、友人もできたのだとか。
たまに霊術院を抜け出して護廷隊に顔を見せることもある。

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