色彩
■ 11.それぞれの目標

『ただいま帰りました・・・って恋次さん?どうしたんですか、これ。』
青藍が六番隊舎に戻ると執務室は書類で一杯になっていた。
「帰ったか。これな・・・。十一番隊から未処理の書類がわんさか出てきたらしくてよ。うちの隊まで回ってきたんだよ。ほんと、俺が居た頃から変わってねぇんだから・・・。一角さんもこういう時だけ俺を頼るのは辞めて欲しいぜ・・・。」
恋次はげんなりとした表情で言った。


『あはは。どれだけ溜め込んでいたのでしょうね・・・。』
その量に青藍は苦笑する。
「青藍、悪いが早速取り掛かってくれ。量は多いがそう難しい書類はないからな。お前ならすぐに終わるだろ。」
『はい。』
疲れたような恋次に青藍は苦笑しつつ筆を持ったのだった。


『恋次さん、終わりましたー。』
山のような書類を処理し終えた青藍は筆をおいて、伸びをしながら言った。
「おう、お疲れ。さすがに早いな。」
『ふふふ。このくらいなんてことはありませんよ。恋次さんは?』
「俺もこれが最後だ。・・・よし。終わったぜ。」
恋次は筆を投げ捨てるように置き、椅子の背もたれにだらんと寄りかかった。


『お疲れ様です。』
そんな恋次に苦笑しつつ青藍は言った。
「お前らも終わったか?」
「「「はい。」」」
恋次の問いに執務室のあちらこちらから声が返ってくる。


『六番隊は優秀ですねぇ。』
その様子に青藍は感心する。
「朽木隊長の指導の賜物だぜ。」
『ふふ。でも、今日、この書類の配分をしたのは恋次さんですよね?それぞれの処理スピードを考えての配分なのでしょう?』
「まぁな。」


『皆がほぼ同時に終わるなんて凄いです。』
青藍はそう言って微笑む。
「お前・・・なんか悪いもんでも食ったのか?」
珍しく褒めた青藍を恋次は怪訝そうに見つめる。
『嫌ですねぇ。副隊長をちゃんと尊敬しているっていう話じゃないですか。恋次さんって副隊長なんですね。』


「おい。どういう意味だそれは。あれか?お前は俺が副隊長じゃないとでも思ってんのか?」
青藍の言葉に恋次は青筋を立てる。
『あはは。違いますよ。父上が隊長で、恋次さんが副隊長。六番隊はバランスが良いなぁと思っただけです。』


「・・・なんか誤魔化されてる気分なんだが。」
笑ってそう言った青藍に、恋次は納得がいかないという顔をする。
『そうですか?僕は隊長や副隊長には向いていないので、凄いなぁと思ったのですが。』
「嘘つくなよ・・・。お前は隊長に向いてるぜ。」
『ふふ。僕は三席くらいで丁度いいのですよ。』


「お前それ、面倒なだけだろ。」
恋次は呆れたように言った。
『あはは。バレました?』
「バレバレだっつうの。ほんと、咲夜さんに似てんだから。」


『あは。僕も最近そう思います。僕は父上よりも母上に似ているんですね。だから、僕の目標は父上なのかもしれません。』
「そうなのか?」
『えぇ。僕、父上のことも大好きですから。』
青藍はそう言って微笑む。


「お前、それ、色々と誤解されるぞ・・・。」
『あはは。そうでしょうね。でも本当ですから。母上が父上を選んだ理由がよく解るのですよ。父上は太陽の下を堂々と歩く人なんです。そして母上と僕はどちらかといえば影を歩く者。だから、父上に手を伸ばす。父上はその手を迷いなく掴んで、影から引っ張り出してくれる。強くて、優しい、大きな人です。』


「ふふ。三席って本当に朽木隊長に憧れているのですね。」
「まぁ、俺もそれは解らなくもないが。」
「そうだね。厳しいけど、それは僕らを思いやってのことだし。」
次々と隊員たちからそんな声が上がる。


『ふふふ。皆も父上が好きなんだね。』
青藍は嬉しそうに微笑む。
「もちろん、副隊長もですよね?」
「あ、あぁ。俺の目標はずっと、「朽木白哉を超えること」だからな。」


『父上は隊士たちにも愛されているのですねぇ。素直じゃない父上に代わってお礼を申し上げます。ありがとうございます。』
青藍は机に両手をついて頭を下げる。
「お前は隊長の母親かっつうの。」
そんな恋次の突っ込みに執務室は笑いで包まれた。

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