色彩
■ 6.面倒な人

「貴様・・・何度言ったらわかるのだ。」
青藍がそこに着くと、何やらお怒りの白哉が居る。
そしてその怒りを向けられている人物を見て、青藍はこの状況を理解した。
「だって、君、こうでもしないと僕の相手してくれないじゃないか!」
白哉に怒気を向けられても平然と子供のような主張をしているのは漣十五夜。
咲夜の大叔父である。


「それは貴方が面倒だからですよ。」
その隣で面倒そうにしている少年は響鬼。
彼等は普段霊王宮に居る。
これでも十五夜は霊王の筆頭家臣なのだ。
そして、響鬼はその秘書官である。
まぁ、響鬼は霊妃の右腕でもあるのだが。


『十五夜様、こちらにいらしていたのですね。』
「青藍!!死神になったのだろう?僕は嬉しいぞ。」
青藍が声を掛けると十五夜はにっこりと笑った。
『ふふ。お蔭さまで。』


「本当に咲夜に似たなぁ。可愛い。僕の咲夜に似てとっても可愛い。」
十五夜はそう言って青藍を撫で繰り回す。
「咲夜は私のものだと、何度言ったら解るのだ。」
十五夜の言葉に白哉の声がさらに温度を下げる。


「五月蝿いぞ、小僧の分際で。僕は君より偉いんだからね!」
「それがどうした。年ばかり取っていつまでも子供のような奴に下げる頭はない。」
「白哉様の言うとおりです。」
響鬼は白哉の言葉に大きく頷く。


「酷いよー。青藍、白哉の小僧と響鬼がいじめる!」
十五夜はそう言って青藍に泣きついた。
『あはは。大丈夫ですよ、十五夜様。あれは父上たちの愛情表現です。少々辛辣なのは愛故ですよ。』
青藍はニコリとしていった。


「青藍・・・。君はやっぱり天使だ!」
そんな青藍に十五夜は思いっきり抱き着く。
あれ、おかしいな。
僕、別に味方したつもりはないのだけれど。


『苦しいです、十五夜様。・・・それで?今日はどのようなご用事でこちらにいらしたのですか?』
「ん?咲夜と青藍たちに会いに来たんだよ?」
『・・・それだけですか?』
青藍は面食らったように言った。


「それだけって酷いなぁ。僕が会いに来て嬉しくないの?」
『それは・・・嬉しいですけど。そんなにお暇ではないでしょう?』
「青藍様の言うとおりです。十五夜様、帰りますよ。一刻後には会議が始まります。」
響鬼はいらいらしたように言った。


「えーまだ青藍にしか会っていないのに。」
「早々に帰れ。」
駄々をこねる十五夜に白哉は切り捨てるように言った。
「白哉、生意気。」
十五夜はそんな白哉を横目で睨む。


「何だと・・・?」
「せっかくこの僕が遊びに来てやったのに。ここ数日、咲夜が邸に帰らなくて一人寂しく眠っている白哉を慰めようとやってきたのに、この仕打ちとは・・・。涙が出てくるよ・・・。」
十五夜はそういって泣くふりをする。


「いらぬ。帰れ。大体、遊んで欲しいのは貴様の方だろう、十五夜。」
・・・霊王の筆頭家臣を呼び捨て出来るのは父上ぐらいだろうなぁ。
十五夜に抱き着かれたまま事の成り行きを見ていた青藍は内心で呟いた。


「僕が遊んで欲しいのを解っていてどうして君はそんなに怒っているんだ!」
抗議をするように十五夜は言った。
「ほう?解らぬか。毎回のように我が隊の隊舎を滅茶苦茶にしているのは貴様であろう。その扇、我が千本桜で粉々にしてやる・・・。」
「やれるものならやってみろ!」


なんだか、駄々のこね方が母上にそっくりだ・・・。
これは遺伝なのだろうか・・・。
というか、この二人、実は仲良し・・・?
内心でそんなことを思いながら、青藍はどうやってこの状況から逃げ出そうか考える。


正直、面倒だ。
「青藍、ちょっと待っててね。今あの鬼白哉を退治してくるから。」
十五夜はそう言って微笑むと、漸く青藍を解放した。
そして、すでに千本桜を構えている白哉に向き直る。

[ prev / next ]
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -