色彩
■ 5.敵に回したくない

「あれ?乱菊さんじゃないっすか。どうしたんすか?」
恋次が現れて、首を傾げる。
『恋次さん、助けてください。乱菊さんがご乱心です。』
「何よ、失礼ね。青藍、生意気だわ!」
「・・・青藍、一体何があったんだ?」


『乱菊さんが書いた朽木家写真集プランを父上が見ることもなく捨てたので、こうなりました。』
「なるほどな。乱菊さん、それは無理ですよ。朽木隊長だけでもハードル高いんすから。」
恋次は呆れたように言った。


「どうしても必要なのよ!女性死神協会の予算が足りないの!だからね、青藍だけでも写真集にならない?」
それまで鬼の形相だった乱菊は笑顔で言った。
『・・・なりませんよ。僕だって嫌です。』
「どうしてよぉ。このあたしが頼んでるのよ?」
乱菊は涙目の上目づかいになっていった。


『そんな目をしても駄目です。・・・胸を押し付けないでください。そんなことをしても僕はやりませんよ。』
「・・・なによ、青藍の癖に。この乱菊お姉さんのお願いが聞けないって言うのね?」
『はい。父上が許しませんし。』
「あーもう。青藍だけならやってくれると思ったんだけどなぁ。意外と押しに弱いところあるし・・・。」


『僕を何だと思っているのですか・・・。それよりも、乱菊さん、仕事です。きっと冬獅郎さんがお怒りですよ。今すぐ自分から帰るのと、冬獅郎さんに迎えに来てもらうのと、どちらがいいですか?』
青藍は伝令神機を取り出し、にっこりと微笑んでいった。


「あ、あはは・・・。」
その青藍の微笑みに、乱菊は顔を引き攣らせた。
『どうしますか?何なら僕が呼んであげますけど。』
尚も青藍は笑顔で問う。
「え、遠慮しておくわ・・・。」


『そうですか。では、僕は仕事に戻りますから、乱菊さんもお仕事頑張ってくださいね?』
「あはは。もちろんよ、青藍。じゃ、あたしは帰るわ。」
乱菊はそう言って逃げるように出て行った。


『ふぅ。これで静かに仕事が出来ます。』
「・・・青藍、お前本当に強いな。」
恋次はポツリと呟く。
『なにを言っているのですか、恋次さん。ほら、恋次さんも仕事に戻らないと父上に怒られますよ。』
青藍は何事もなかったように言った。


「・・・あぁ。」
そんな青藍を見て、恋次は内心震える。
やっぱりあの二人の子どもだ・・・。
・・・本当に敵に回したくないぜ。
そんなことを思いながら、恋次も仕事に戻ったのだった。


そんなこんなで一か月ほどが経った。
青藍見たさにあちらこちらから隊士たちが六番隊にやってきていたが、それも収まりつつある。
『暇だなぁ。』
青藍はそう言って隊舎の屋根で日向ぼっこをしていた。
流石というかなんというか、青藍は仕事をあっという間に覚えてしまったため、仕事中に暇を持て余すことが増えたのだ。


『父上に言ってもあんまり仕事を増やしてはくれないしなぁ・・・。僕は父上の支えになりたいのに。まだまだ、って言うことかなぁ。』
小さく不満を零しながら、青藍は屋根から降りて近くの窓から建物の中に入り、古びた書庫に似合わない真新しいソファにごろりと横になる。
『今日もいい天気だ・・・。』
窓から見える空にそんなことを呟いて、青藍は瞼を閉じた。


ドォーン!!
そんな音がして青藍は目が覚めた。
窓から見ると、隊舎から煙が出ている。
そして、隊舎の一部が吹き飛んでいる様子だ。
『・・・何かあったのだろうか?』
青藍は飛び起きてそちらへ向かった。

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