色彩
■ 1.入隊式

桜が見ごろを迎えた、春。
今日は護廷隊の入隊式である。
『・・・よし。これでいいかな。』
青藍は身だしなみを整えて、邸を出る。
「青藍兄様!いってらっしゃい!」
その元気な声に振り向くと、茶羅が大きく手を振っていた。


「兄様!僕も頑張ります!」
その隣には、今年から霊術院に通うことになった橙晴もいる。
『ふふ。行ってくるよ!橙晴も頑張れ!会いに行くから。茶羅は寂しいかもしれないけど、なるべく邸に帰るようにするからね。』
「「はい!」」


青藍はいつものように六番隊へと向かった。
入隊式が始まり、恋次の進行で白哉が壇上に立った。
その姿に青藍は胸を躍らせる。
こうやって、隊長としての白哉を見るのは青藍にとっても誇らしいことなのだ。
威厳のあるその姿をしっかりと見つめ、話を聞く。


そんな青藍に気が付いたのか、白哉は青藍をみて、目だけで笑う。
他の者には解らない表情の変化だが、青藍にはそれを読み取ることが出来た。
父上は、ちゃんと僕を見ていてくれる。
今日、やっと、父上と同じ死神になった。
父上のために、精一杯頑張ろう。
青藍は改めてそう誓ったのだった。


「・・・咲夜。」
挨拶の途中で、白哉は突然咲夜の名を呼んだ。
恋次を始めとした席官たちはいつものことだという表情を浮かべる。
「あら?今年も見つかったか。どうして見つかるのだろうなぁ・・・。」
その声にこたえて咲夜が姿を現す。
その姿に、新入隊員たちはざわついた。


「ふふ。諸君、初めまして。十三番隊朽木咲夜だ。朽木家当主、つまり、この朽木白哉の妻でもある。皆、白哉を頼むぞ。」
その言葉に新入隊員たちの大半が目を丸くする。
「ふふん。さすがに六番隊は貴族出身が多いが私の顔を知るものはやはり少ないようだな。」
咲夜は楽しそうに笑う。


「・・・それから、今年から我が隊の第三席に朽木青藍を迎えることとなった。朽木青藍、前へ。」
『はい。』
白哉の言葉に戸惑いながらも青藍は前へと足を進める。
「この人事に不満を覚えるものもあるだろう。だが、先に言っておく。この者は朽木家の力で三席になったのではない。」


「そうそう。この私が育てたのだ。実力はすでに副隊長レベルを超えている。侮るなよ。朽木家だからと丁重に扱う必要はないが。・・・恋次などは青藍に副隊長の座を奪われぬように頑張ることだな。」
咲夜はそう言って悪戯に笑った。
「咲夜さん・・・それ、冗談に聞こえないんすけど。」


「冗談じゃないからな。頑張れよ、阿散井副隊長。・・・さて、そうはいっても、納得しないものも居るだろうからな。青藍、実力を見せてやれ。そうだな、恋次と打ち合いをしてもらおうか。」
「俺すか。」
「そうだ。斬魄刀の解放はなし。斬拳走鬼、だけでやり合ってもらおう。いいな、青藍。」


『はい。』
「・・・わかりました。」
「では、皆の者、修練場へ移動しろ。恋次、六番隊の隊士たちも連れて来い。」
「はい、隊長。」
白哉の声で皆が修練場へと移動を開始した。


『阿散井副隊長、お手柔らかにお願いいたします。』
修練場へと移動した青藍は斬魄刀を構えて恋次と相対した。
「・・・お前にそう呼ばれるのは何だか違和感があるな。」
そういって恋次も斬魄刀を構える。


『ふふふ。僕もそう呼ぶのは違和感があります。』
「いつも通りでいいぜ。」
『それは嬉しいですね。行きますよ、恋次さん。』
「あぁ。」


「恋次、負けたら青藍が副隊長ね。」
「えぇ!?咲夜さん、それは酷いっす。」
「ほう、それもいいかもしれぬな。」
「隊長!?」


『あはは。あれは冗談なのでそう心配しないでくださいよ、恋次さん。』
「・・・お前はあれが冗談に見えるのか?」
そう言って恋次は白哉と咲夜の二人を見る。
『ふふふ。冗談ですよ。お二人ともとても楽しそうですから。』


「いや、隊長はいつもと変わらない気が・・・。」
『やだなぁ、目で笑っているじゃないですか。それに、恋次さんが思っているより、朽木隊長は恋次さんを信頼しているんですよ。そうですよね、朽木隊長?』
「・・・さぁな。それより、いつものように呼べ。落ち着かぬ。」


『相変わらず父上は素直じゃないですねぇ。』
「そうそう。白哉は素直じゃないんだよね。あ、私もいつも通り呼んでくれよ。青藍に役職で呼ばれるのは嫌だ。」
『解りました。では母上、合図をお願いします。』
「はいはい。では、始め!」

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