色彩
■ 29.告白・・・?

「好きです。付き合って下さい。」
少女は、頬を赤らめ、涙目になりながら言った。
「・・・悪いけど、君の気持ちには応えられない。」
少年は、真剣な表情で告白を断る。
その瞳には恐怖とも憎しみとも嫌悪とも取れる感情が映っているのだが、それに気付く者は極僅かだ。


「そう、ですよね・・・。」
俯いた少女の瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。
「・・・ごめん。」
少年の言葉に、少女は首を横に振る。
「いいえ。・・・聞いてくれて、ありがとうございました。」
少女は溢れる涙を隠すように一礼して、駈け出していく。


『・・・・・・二人とも、何をしているの・・・。』
そこへ、呆れた声が掛かる。
場所は特進クラス。
教壇に立った二人組を、クラスの者たちはまじまじと見つめていた。
「何って・・・。」
「それは・・・。」


「「兄様の真似!・・・皆様、ご清聴ありがとうございました!」」
楽しげに答えた弟と妹に拍手が送られるのを見て、青藍は苦笑するしかない。
先ほど涙を零した少女は、茶羅。
告白を断った少年は、橙晴。
青藍の可愛い妹と弟だ。


『・・・あのね、僕はともかく相手の方に失礼だから、そういうことはやめなさい。』
先ほど断ってきた告白の様子がそのまま再現されていることに内心で頭を抱えながら、窘めるように言うが、双子は不満げな顔をするだけである。
「だって、兄様、いっつも断るんだもの。」
「それも同じ言葉で。いい加減、覚えてしまいます。」


詰まらなさそうに言われて、頭を抱えたくなる。
一体、どこから、見られているのか。
いつも気配は感じるが、僕が告白を断ると気配が遠ざかる。
きっと彼らは、僕の護衛以上に僕のことをよく見張っている。
無駄に能力の高い双子に、青藍は内心苦笑した。


それでも睦月には負けるのだけれど。
まぁ、睦月は例外か。
睦月は僕に対して過保護すぎるくらい過保護だから。
その理由に心当たりがあるから文句を言うのは内心に留めるけれど。


「なんだ、青藍、また断ったの?」
「つれない奴だなぁ、お前。」
京と侑李はつまらなさそうに言う。
「青藍、別に婚約者とかいないのにね。」
キリトの言葉に青藍は苦笑した。


『婚約者がいないからといって、好きにしていいわけじゃないでしょ。僕、こう見えて朽木青藍っていう名前なんだよ。』
「ということは、青藍が誰とも付き合わないのは、朽木家からの命令?」
『・・・まぁ、そういうことでも、ないけどね。』
歯切れの悪い答えに、侑李たちは首を傾げるも、それ以上は聞いてこない。


『それで、橙晴に茶羅。護衛の皆はどうしたのかな?』
青藍は妙な空気を振り切るように双子の方を見る。
先ほどから、二人の護衛の気配がない。
その理由を何となく察しつつも、青藍は二人に問うた。
「「撒いてきました!」」
得意気に言う二人に、あぁやっぱりか、と後で睦月からお叱りを受けるであろう護衛たちに同情する。


『・・・護衛は撒いたら駄目だと何度も言っているでしょう。』
「だって、遅いのよ。」
「それに、僕らは兄様と違って、攫われたりしませんから。」
「そうですわ。兄様は気が付くと攫われたり攫われそうになったりしていますけど、茶羅も橙晴も攫われないもの。」


「それに、今日ここに僕らを連れてきたのは、烈先生です。だから大丈夫。」
「「ねぇ、烈先生?」」
「ふふ。そうですね。睦月に用があったものですから。」
青藍の背後に現れた卯ノ花にクラスにざわめきが奔るが、青藍は気にすることなく抗議をしようと振り向いた。
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