色彩
■ 27.事の真相

「・・・帰ろうか、白哉。」
浮竹たちに捕縛され、連行されていく鬼狼を見つめながら、咲夜はポツリと呟く。
「そうだな。いずれ、鬼狼の口から首謀者の名前を聞きだすことも出来よう。・・・残念なことに、まだ、先は長い。」


「あぁ。首謀者の検討はついていても、確固たる証拠がない。首謀者を捕まえても、青藍は未だ女性不信だ。女性死神協会と関わっているお蔭で、彼女らから触れられることは平気になったようだが、青藍が自分から触れることの出来る女性は、未だ私とルキアと茶羅、それに烈さんだけ。」
咲夜の言葉に、白哉は静かに頷く。


「雪乃も、駄目なようだな。」
「そうらしい。・・・いい相手だと、思ったのだがなぁ。」
「こればかりは待つしかなかろう。」
「孫の顔を見るのは遠そうだなぁ、白哉。」
そう言いながらも楽しげな咲夜を横目で見て、白哉は小さく笑う。


「気長に待つ。私はそなたを百年待ったからな。待たされるのには慣れている。」
「あはは。私だって、白哉を何年待ったことか。」
「自覚していなかった奴が何を言う。」
呆れたように言った白哉に、咲夜は笑みを零す。


「ふふ。それでも私は、白哉を見つけた。私が、三番目に遭遇した奇跡だ。」
「ほう?一番目と二番目は?」
「一番目は蒼純様。二番目は浮竹と京楽。彼等との出会いもまた、私の奇跡だ。」
「・・・相変わらずだな。爺様を除外すると、拗ねられるぞ。」


「そうか?拗ねているのは、白哉だろう。」
図星を突かれた白哉は、言葉に詰まる。
「・・・別にいいだろう。帰るぞ、咲夜。」
「ふふ。うん。帰ろう。」


・・・なんだか苦しい。
でも、嫌な苦しさではない。
というより、覚えのある苦しさだ。
意識が浮上した青藍は、ぼんやりとそんなことを考える。


首の後ろ側が痛いのは、何故だったか・・・。
というか、僕は、いつ眠ったんだっけ?
何か、突然、意識が飛んだような・・・。
微睡みの中で考えていると、ふと、誰かの気配がして、意識がはっきりとする。


『ちちうえ・・・?』
ゆっくりと瞼を開けて頭だけ動かすと、部屋の縁に父上が居た。
夜なのか、父上の後ろには夜空が広がり、月が浮かんでいる。
「起きたか。」


『はい・・・あぁ、なるほど。これの苦しさだったのか。』
青藍は起きあがろうとして、何となく苦しさを覚えていた理由に気付く。
両脇に、橙晴と茶羅が居るのだ。
ぴったりとくっついて、茶羅の体は半分青藍の上に乗り上げていた。
「そばに居ると、聞かなかったのだ。」
父上は困ったように言いつつも、柔らかな眼差しを向ける。


『僕は、どうして・・・?』
小さく問えば、父上は苦笑した。
「睦月が、そなたの意識を落とした。」
『え・・・?』


僕は、意識を落とされるようなことは、していない・・・いや、過去にはしたかもしれないけれど、睦月は知らないはず。
考え込む青藍の気配に、白哉は微妙な顔をする。
「覚えていないのか?」


『えー、と・・・あ・・・そうか・・・鬼狼先生・・・。』
「そうだ。・・・聞くか?」
様子を伺うような視線に、青藍は逡巡してからゆっくりと頷いた。
『・・・はい。聞かせてください。』


青藍は、白哉の静かな声に耳を傾ける。
鬼狼が四白の弟であること。
四白が死んだとき、鬼狼もそばに居たこと。
あの時、弟である自分ではなく青藍を守った四白を憎んだこと。


その憎しみが青藍に向けられて、あの、青藍の最大のトラウマである誘拐事件の首謀者に協力したのであろうということ。
その首謀者は解っていないが、実行犯である鬼狼を捕えたことで、それもいずれ解るだろうということ。
青藍は、その全てを、静かに聞いた。
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