色彩
■ 22.白打の授業

三日後。
青藍たちは白打の実習をしていた。
三回生となれば、皆型は覚えているため、そこここで実践的な取り組みが行われていた。
青藍はキリトたちの型を見たり、彼等と実際に戦ったりといつものように授業を受けていた。


「青藍。少し、型を確認したいのだけれど・・・。」
『雪乃。もちろんいいよ。・・・京!ちょっと雪乃の相手をして!』
頷いた青藍はそう言って京を呼ぶ。
呼ばれた京は雪乃と向き合って、互いに一礼した。
『・・・では、始め!』
青藍が言うと、二人は組手を始めた。


たん、とん、たん、ぱし、たたん。
互いに軽くやっているために、聞こえてくる音は軽い。
雪乃が突きを繰り出せば、京はその拳を受け流して雪乃の腕をつかむ。
そのまま投げようとする京の腹部に、雪乃の鋭い蹴りが入れられようとした。
京は雪乃の腕を離して、その蹴りをギリギリで避ける。


『・・・止め!二人とも、もういいよ。』
青藍の制止に二人はピタリと動きを止める。
そのまま互いに手を引いた。
「「ありがとうございました。」」
それから始まった時と同様に一礼し、青藍の元へとやって来た。


『二人とも、型が綺麗になったね。・・・雪乃が意外と強くて吃驚だよ、僕は。』
「あら、そう?」
「・・・うん。僕、雪乃の蹴り避けられて良かった。」
京はそう言って苦笑する。


『ふふ。でもね、雪乃。あそこは蹴りで返すんじゃなくて、拳を受け流されたときにそのまま大きく腕を広げた方がいい。もう一度さっきの二人でゆっくりとやってみて。』
青藍に言われるままに、二人は先ほどと同じように動き始める。


『雪乃の拳を京が受け流す。このとき、その腕をそのままにしておくのではなくて、思い切り外側に広げてしまうんだ。それで、相手を突いた時の勢いを殺さずに、そのまま京の脇をすり抜ける。』


「こういうこと・・・?」
言われた通りに動いた雪乃は、するりと京の脇をすり抜けた。
『うん。そうすると、相手は自分に向かって次の攻撃を仕掛けようと向かってくるわけだから、すぐには振り返ることが出来ない。』


「あ、だから、そのまま後ろに回って、受け流された方の手でこんな風に手刀でも首に落とせばいいのね?」
雪乃は言いながらぴたり、と、京のうしろ首に手刀を突きつけた。
『ご名答。そういう戦い方をすれば、膂力の差は関係なくなるから。まぁ、もちろん京がやってもいいけどね。』


「なるほどね。やっぱり青藍って、凄いんだね。凄く勉強になるよ。」
「えぇ。それに教えるのが上手いわ。」
『そうかな。』
「そうよ。」
「うん。先生より上手いかも。」


「・・・君は、教えることも出来るようだね。流石朽木家、というべきかな。」
聞こえてきた声に、青藍は内心でげんなりしながらも笑みを張り付けて振り向く。
『僕は、教わった通りに彼らに教えただけです。』
「へぇ。白打は、誰に教わったのかな?」


興味津々と言った様子で問うてくるのは鬼狼だ。
青藍はなるべく彼の瞳を見ないようにして、会話を続ける。
雪乃と京は何かを察したのか、こそこそと青藍たちから距離を取って、侑李とキリトの方へと逃げていった。


『白打は、ほとんど母に。』
「あの有名な漣家の巫女だね?」
『はい。』
「私が戦ったら、どちらが強い?」
『母の圧勝でしょうね。先生が動く前に、決着がつきます。』
即答した青藍に、鬼狼は思わず苦笑する。
「なるほど。それは、ぜひ一度、手合わせ願いたいものです。」


「・・・今、相手をしてやってもいいぞ?」
楽しげな声が聞こえてきて、青藍は思わず遠い目をする。
何故、母上は、出てきてしまうのですか・・・。
咲夜が隠れて見ていることに気付いていた青藍は、素知らぬ顔でこの鬼狼と母を会わせないようにしていたのだが。


気配が近くなったと同時に、背中から抱き着かれる。
『母上・・・。またいらっしゃったのですか・・・。』
「まぁいいだろう。私は白哉と違って暇なのだ。今日の仕事は終わっている。」
『暇でも一応職務中では・・・。』


「大丈夫だ。私の職務は弱った浮竹の世話。書類仕事はおまけだ。だから浮竹が元気ならば私の仕事はないも同然なのだ!」
堂々と言われて、青藍は早々に抗うのをやめる。
『父上には?』
「白哉は青藍に会いに行く分には文句は言わない。無駄に顔を晒すと嫌な顔をされるだけだ。」


『この状況はそうではない、と?』
「そうだ!だって、この特進クラスの皆は、私の顔を知っている!つまり!私はこそこそする必要がないのだ!」
得意気な顔をする咲夜に、青藍は苦笑する。
『まぁ、僕はそれで納得しますけどね・・・。父上はどうだか・・・。』
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