色彩
■ 騒がしい日々B後編

『・・・縛道の四、這縄。』
剣八の剣を持つ手が捕えられる。
「あ?こんなもの・・・。」
『縛道の六十一、六杖光牢。』
剣八がそれを振り切る前にさらに縛道を掛ける。


『縛道の六十三、鎖条鎖縛。』
「くそ。」
捕えられた剣八は忌々しげに縛道を解こうとする。
それを見た青藍は何処からか縄を取り出し、剣八をグルグル巻きにして、転がした。


「おい!てめぇ!何しやがる!おい!朽木白哉!お前のガキだろうが!こいつを何とかしろよ!」
「・・・。」
そんなことを言われつつも、白哉はただ馬鹿を見るような目で剣八を見ているだけである。


『五月蝿いですねぇ。お持ち帰りの準備ですよ。・・・やちるさん!こちらに来てください!』
「はぁーい。なぁに?ランラン?」
『やちるさん、ここに金平糖が1瓶あります。これ、欲しいですか?』
「くれるの!?」
またもやどこからか金平糖を取り出した青藍に、やちるは瞳を輝かせた。


『えぇ。その代り、ちょっと僕のお願い聞いてくれませんか?』
「いいよ!」
『ふふ。それは良かった。じゃあ、剣八さんを十一番隊舎まで運んで行ってください。』
「わかった!」
青藍の言葉に頷いて、やちるはグルグル巻きにされた剣八を軽々と担ぎ上げる。


「おい!やちる!買収されてんじゃねぇ!!!!知らないやつから菓子を貰うなっていつも言ってんだろうが!!!」
剣八が暴れるが、やちるはものともしない。
「ランランは知らない人じゃないよ。いつもお菓子くれるもん。」
「そう言うことじゃねぇだろうが!・・・もが!?」
騒ぎ続ける剣八に、青藍は猿轡で話せないようにする。


『ふふふ。いつでも金平糖を用意して待っていますよ、やちるさん。落とさないように持ち帰ってくださいね。』
青藍はそう言って金平糖をやちるに渡す。
「うん!ランラン、またね!!!」
それを大事そうに抱えて、やちるは姿を消したのだった。


『これで良し。父上も、斬魄刀をしまってくださいね。』
やちるの姿を見送って、青藍は白哉にそう言った。
「あぁ。」
言われた白哉は素直に斬魄刀を鞘に納める。


『隊長羽織がボロボロじゃないですか・・・。また新調が必要ですね。』
白哉を見て青藍は呆れたように言った。
「安物故問題ない。」
『この羽織を安物というのは父上くらいですよ。隊長羽織は特別なものでしょうに・・・。』


「隊長羽織など、ただの飾りであろう。羽織がなくとも、私が隊長であることに変わりはない。」
『それはそうですけどね。あまり粗末にすると、また山本の爺に叱られますよ。瀞霊廷中に響くような声で。』
「それは面倒だな。総隊長の説教は長い。」
『ですから、もう少し丁寧に扱うことをお勧めします。』
「善処する。」


「青藍様!」
そんな話をしていると、睦月が駆け寄ってきた。
「お怪我はありませんか!?あんなところに飛び込む何て、無茶が過ぎます!僕の寿命を縮める気ですか!!!」


睦月はすぐに青藍の首を見て、怪我がないことを確かめる。
本気で心配しているらしい。
『あはは。ごめんね、睦月。心配させたようで。大丈夫だよ。お二人とも気が付いて手を止めてくださったから、僕は無傷だ。』


「・・・そのようですね。あの霊圧と剣圧に晒されながら、無傷とは。普通なら剣圧で皮膚が焼け焦げます。」
『あはは。僕にだって霊圧はあるんだよ。それで防ぐぐらい出来るって。心配性だなぁ、睦月は。』
「笑い事ではありません。」
睦月は怒ったように言う。


『それに、睦月が此処に向かってきてくれているのが分かったから僕もあんな無茶が出来るのさ。僕がどんな怪我をしたって、どんな病気になったって、睦月が治してくれるのだろう?』
青藍はそう言って睦月に微笑んだ。


あぁもう。
こいつは本当にずるい奴だ。
そんなことを言われてしまったら頷くしかないだろう。
睦月は内心で呟く。


「もちろんです。そのために僕は居るのですから。だからと言って、このような無茶はお控えください。・・・もちろん当主様もですよ。」
睦月はそう言って白哉に視線を移す。
「私の怪我や病気も睦月が治せば問題ない。」
「・・・はぁ。解りましたよ。治しますから、すぐにその左腕をお出しください。血が出ていますよ。」


「草薙先生、大変ね。」
それを見ていた雪乃が呟く。
「そうだね。青藍って、お母さん似なのかと思ったけど、意外とお父さんに似ているのかも。」


「そうだな。あの親子、そっくりだわ。無茶するところも、ずるいところも。」
「うん。あんな親だもの、青藍が無茶をするのは仕方がないのかもね。」
京は諦めたように言う。
「でも、普通、あの間合いに入って行くことはしないよな・・・。つか、入れない。」
「うん・・・。青藍、死んじゃうかと思った。」


「ていうか、あの速さ何なの?僕、青藍の姿全く見えなかったんだけど。」
「俺も。」
「あら、知らないの?青藍、すでに副隊長並みの実力なのよ。早さだけなら隊長にも劣らないという話よ。」
「まじかよ・・・。」



2016.07.08
青藍が白哉さんと剣八さんの間に飛び込んでいくことが出来るのは、二人の腕を信頼しているからです。
睦月は白哉さんのことは信用していますが、剣八さんが青藍を邪魔に思って切り捨ててしまうのではないかと気が気ではありません。


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