色彩
■ 騒がしい日々B前編

「あ、ランランだ!」
斬術の実習中に上からやちるが現れ、青藍の肩に着地した。
『うわ!?やちるさん!?』
このころには青藍の周りで何があっても教師、クラスの面々は気にしなくなっていた。
というより、あまり関わらない方が身のためだと判断したのだろう。


『・・・何をしているのですか?』
「えーっとねぇ、剣ちゃんを追いかけてたはずなんだけど、いつの間にか追い越しちゃったみたい!そしたら、甘いにおいがしたから来たの!ランラン、何か持ってる?」
くんくんと鼻を鳴らしながらやちるは言う。
『あはは。流石ですねぇ、やちるさん。今日は丁度金平糖を持っているんです。どうぞ。』
「やった!」


『それで、何故剣八さんを追いかけていたのですか?』
「あのね、剣ちゃんとびゃっくんが喧嘩しているの!」
『父上と剣八さんが?』
「うん!」
青藍の問いにはっきりと頷いたやちるをみて、青藍は頭を抱えたくなった。


「それで、剣ちゃんに振り落とされちゃったから追いかけてたの。こっちに、来るよ。」
『え?こっちって、この霊術院に?』
「うん。剣ちゃん、近づいて来ているもの。」
それは・・・色々とまずい気がするなぁ。
とりあえず。


『先生!院生と一緒に避難してください!』
「は?それはどういう・・・。」
『何でもいいから、とりあえず避難!!!!』
青藍の焦った様子に、院生たちが避難しようとした時。


ドォーン!!!
そんな轟音と共に砂煙が舞いあがる。
あぁ・・・。
間に合わなかったか・・・。
そう思った青藍はとりあえずその場にいる者たちを守るように結界を張る。


『まぁ、こんなもの役に立つかどうかわからないけど。・・・侑李!京!キリト!それから雪乃!この結界を強化しておいて!できればクラスの皆にも手伝ってもらってね。それから、やちるさんもよろしく!』
青藍はそう言ってやちるを結界の中に放り込む。


「それは、解ったけどよ・・・。」
「一体、何が起こったの?」
「何か、命の危険を感じるよね・・・。」
「この霊圧、覚えがあるのは気のせいかしら?」


『あはは・・・。隊長たちの喧嘩の戦場になったらしい。仕方がないから、僕、止めてくるよ・・・。』
青藍は疲れ切ったように言った。
「青藍が行くということは・・・朽木隊長?」
『あはは・・・。』


「言われてみれば、朽木隊長の霊圧だわ。いつもより霊圧が上がっているから解らなかったわ。」
「でも、もう一人は・・・?」
「この霊圧、もしかして・・・?」
『あはは。雪乃、気が付いた?』


「・・・更木隊長ね。」
「「「えぇ!?」」」
「青藍、苦労するわね。私たちも本気で結界を強化しなければ危険だわ。」
『うん。よろしく。皆気を付けてね。』


漸く煙が晴れて、二人の姿が目視出来るようになる。
二人の姿をみて、青藍たちを除く、その場にいた者たちは目を見開いた。
『まだ、父上は始解しかしていないみたいだ。今のうちに何とかしないと。』
「策はあるの?」
『まぁね。とりあえずあの二人の動きを止めるよ。・・・止められればの話だけどね。』


「早く止めないと、霊術院が吹き飛んでしまうよ。」
「だな。他の院生たちもこっちで何かあったことに気が付いたようだぞ。」
「草薙先生の霊圧もこっちに来ているみたい。」
『あはは。さすが睦月。睦月が来れば怪我しても大丈夫だね。じゃあ、僕、行ってくるよ。』
青藍はそう言うと、二人の凄まじい攻防の中に身を投じた。


更木との戦いに熱くなっていた白哉だったが、青藍の霊圧が近くにあることに気が付き、ここがどこであるかを認識して、冷静さを取り戻していた。
だが、目の前の男は構わず攻撃を続けてくる。
そもそも、何故私はこの男と戦っているのだろうか?
元々気に食わない男ではあったが、戦う理由はなかったはずだ。


私は恋次と共に隊士の前で演習をしていたのだ。
そこに、この男が現れ、喧嘩を売ってきたのだったか。
まぁ、良い。
私が早々に勝負を終わらせればよいことだ。
白哉はそんなことを考えて、剣を握る手に力を込めた。
そして、刃を振るうと、剣八もそれに応戦する。


その刹那。
間に何者かが現れた気配を感じて、白哉と剣八は手を止めた。
『・・・ふぅ。止まってくれてよかったです。この間合いに入って無傷とは流石隊長ですね。お二人が止まってくださらなかったら、僕の首が飛んでいるところでした。』
二人の刃が自らの首元に突きつけられているにも関わらず、青藍は笑った。
その光景を見た院生たちは顔を青くしていたが。


「あぁ?邪魔すんなよ。」
そんな青藍に剣八は凄む。
『邪魔?邪魔をしているのはそちらの方ですよ、剣八さん。ここは霊術院で、今は剣術の実習中なのですから。』
青藍の言葉に剣八は舌打ちをする。


『・・・お二人とも、剣をお引きください。』
青藍の言葉を聞いているのか居ないのか、二人とも互いから目を離さず、動く気配を見せない。
『・・・はぁ。』
その様子に青藍は大きなため息を吐いた。



2016.07.08
白哉さんvs剣八さん。
後編に続きます。


[ prev / next ]
top
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -