色彩
■ 17.追いかけられる

特別講義の翌日。
青藍は逃げ回っていた。
昨日の勝ち抜き戦はぐだぐだとなってしまったが、青藍が勝ち抜いたため、賞品が贈られた。


・・・それがワカメ大使の等身大のぬいぐるみだったことには何もつっこむまい。
まぁ、昨日はベッドで仲良く眠ったのだが。
あのビジュアルを除けば、触り心地も抱き心地も良かった。
それはそれでいいとして、とりあえず、青藍は逃げ回っていた。


『もう、なにこれ!?僕が何をしたっていうの・・・。』
そんな言葉を口にしながら。
漸く自分の教室に駆け込んで扉をぴしゃりと閉めた。
そのままずるずると扉を背にしてしゃがみこむ。


「よう、青藍。お疲れ。」
「あ、青藍、次は草薙先生の授業だよ。」
「薬草園に移動だね。」
そんな青藍をみた三人は暢気にそう言った。


『皆、何がどうしてこうなったのか、僕には解らないのだけれど。なんで僕、女の子たちに追われているの?』
青藍が疲れたように言った。
・・・というか、女の子に追いかけられるのは結構トラウマだからやめて欲しい。
青藍は内心で呟く。


「そりゃあ、昨日の件のせいだろう。」
「うん。だって青藍、格好良かったもの。」
「あれを見せられたら、女子は放って置かないでしょ。」
三人は教科書を手にしながら何でもない事のように言う。


『僕が何をしたっていうのさ・・・。それに、昨日の僕は多分、すごく怖かったはず。恋次さんたちもそう言っていたし。』
「ま、確かに怖かったけどな。でもそれ以上に、朽木副隊長を守った姿が印象に残ってんだろ。」


『え?僕何か変なことしたかな・・・。』
「本当に自覚がないのね。」
自覚がない青藍に、呆れたような声が掛かった。
『雪乃・・・。あれ、止められないの?』
「私でも無理だわ。噂がどんどん誇張されて広がっているもの。毎日逃げ回るしかなさそうね。ご愁傷様。」
雪乃はそう言って微笑んだ。


『酷い・・・。』
「仕方ないわよ。朽木副隊長を、体を張って守ったのだから。朽木家の御曹司が身を挺して守ってくれるなんて、女子としては理想のシチュエーションでしょ?私はそんなものどうでもいいけれど。」


『当たり前のことをしただけじゃないか・・・。僕のせいで姉さまが傷つくなんて嫌だもの。』
「青藍ってどこかの王子様みたいだよね。」
「あぁ。ま、王子みたいなもんだけどな。」


『はぁ。せっかくまだ学院に居られるのに、これじゃあ平和な学院生活とは程遠いじゃないか・・・。』
青藍は拗ねたように言った。
「文句を言わないの。お父上のお言葉があったから、貴方はここに残ることが出来るのよ。」


『それはそうなんだけどね・・・。』
あのあと、学院長が出てきて、白哉に青藍をすぐに死神にすると申し出たのだ。
しかし、白哉はそれを断った。
まだまだ未熟故、卒業まで面倒を見てはもらえまいか、といって。


それに付け加えて、この無茶をする子供に手加減を覚えさせてやってくれ、ともいったのだが。
これには流石に青藍は頬を膨らませた。
「まぁ、いいじゃないの。私たちと一緒に卒業できるということでしょう?」
『・・・そうだね。頑張るよ。』
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