色彩
■ 16.次はない

「・・・加賀美殿、何か弁明はあるか?」
青藍たちをちらりと見て、白哉は静かに加賀美の当主に問うた。
「・・・いえ。何の弁明もございません。どのような処分もうける所存でございます。」
加賀美の当主は白哉に深々と頭を下げながら言う。
「そうか。」
白哉はそう言ってしばらく沈黙する。


「・・・加賀美豪紀、といったな?」
考えがまとまったのか、白哉はそう声を掛けた。
「・・・はい。」
「青藍のみならず、ルキアにまで手を出した罪は重いぞ。」
「解っております。」
「どう、責を負うつもりだ?」
「朽木様のお心のままに。」


「・・・では、私が加賀美家を潰しても良いというのだな?」
「はい。どのような罰でもお受けいたします。」
そう言った加賀美を白哉はじっと見つめる。
「・・・次はない。」
白哉はしばらくの沈黙の後、短くそう言って、くるりと加賀美親子に背を向けた。


「お、お待ちください!それは、どういうことです!?」
加賀美の当主が慌てたように白哉に声を掛ける。
「・・・二度は言わぬ。」
立ち止まった白哉は振り返ることなくそう言った。
その言葉に、加賀美親子はぽかん、とした顔になる。


「あはは!流石白哉だな。いい子だ。」
それを見ていた咲夜は、白哉に近づき、頭を撫でた。
「・・・やめろ。」
「寛大な処置だなぁ。」
「そうでもない。・・・加賀美家を潰すのは容易い。だが、その場合、後処理をするのは私だ。これ以上仕事を増やされては敵わぬのでな。それだけのことだ。」
面倒だという表情で白哉は言った。


「素直じゃないなぁ。それにしても、やっぱり君たち、親子だなぁ。」
「それは私の言葉だろう。何故そなたらはこうも無茶をするのか・・・。」
白哉は呆れたように言った。
「あはは。それは私と君の子だから仕方ないだろう。」
咲夜はそう言って笑う。
「・・・はぁ。」
そんな咲夜を見て白哉は大きなため息を吐いた。


「あはは。朽木隊長も大変だねぇ、浮竹。」
「はは。俺たちも十分大変な目に遭っているけどな。」
「違いない。」
二人は暢気にそんな会話をする。
「あ、あの?一体、何が、どうなって・・・?」
混乱していた加賀美親子はそんな様子の浮竹と京楽に声を掛けた。


「あぁ、今回は許すってことさ。」
「え?」
「そうだな。相変わらず、白哉は言葉が少ない。・・・だが、次はないぞ。」
浮竹は笑みを消して言った。
「そうそう。次こんなことがあったら、僕ら死神も加賀美家の敵になると思ってね。」
京楽もいつものだらしない顔はどこかに行ったらしく大真面目な顔で言う。


「ははは。京楽、それは脅しっていうんだぞ。」
「何言ってるの。浮竹だってそうじゃないか。」
再び笑みを浮かべた二人はそう言って白哉たちの方へ向かっていく。
その背中に、加賀美親子は深々と頭を下げた。


「青藍。」
白哉は未だにルキアを抱きしめている青藍に声を掛ける。
『・・・。』
しかし、青藍は顔を上げようとしない。
「こら、青藍、返事をせぬか。」
『・・・はい。』
ルキアに窘められて青藍は渋々返事をする。


「顔を上げろ。」
白哉に言われて青藍は漸くルキアを放した。
そして、ゆっくりと顔を上げる。
すると白哉は青藍の頬に手を伸ばし、ぺち、とその頬を軽くたたいた。
『!?』
青藍はそれに目を見開く。


「・・・やりすぎだ。あとで謝っておくのだな。睦月、手当をしてやれ。」
白哉はそう言って加賀美を見る。
「はい。」
睦月がどこからか現れて、加賀美の元へと向かう。


確かにボロボロだ。
治療される加賀美を見て、青藍は内心苦笑した。
『はい。そうします。』
そして青藍は素直に頷く。
そんな青藍に白哉はふ、と笑みを零した。


「・・・よくルキアを守ったな。」
白哉はそう言って青藍の頭を撫でる。
『・・・はい!父上!』
そんな白哉の手に、青藍はようやく笑みを見せた。
その様子が主人に褒められた犬のようで、咲夜たちは笑いを堪えるのだった。
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