色彩
■ 15.自分の力で手に入れたい

『さて、君は一度ならず二度までも僕を怒らせた。仏の顔も三度まで、というけれど、僕は仏ではないからね。三回も許してはあげないよ。』
青藍の声は再び冷たいものになっている。
「誰も許せとは言っていない。それで?お前は朽木青藍なんだろ?」
『・・・君がそれを知る必要はない。』


「何故そうまでして隠す?朽木家の者ならば、誰も彼もがお前に頭を下げるだろうに。そもそも霊術院に来る必要もない。」
『君が知る必要はないと言っているだろう?・・・さぁ、続きを始めようじゃないか。構えなよ。じゃないと・・・死んでしまうかもしれないよ?』
青藍はそう言って悪魔のように美しく微笑んだ。


斬魄刀を構えた加賀美に青藍はすぐさま斬りかかった。
加賀美はその斬撃を受け止めきれずに、吹き飛ぶ。
しかし、青藍は加賀美が着地する前に後ろに回り、容赦なく蹴りを繰り出した。
「がはっ!」
加賀美からうめき声が上がる。


『僕は、僕の大切なものを傷つける者を許さないよ。・・・だから、姉さまを傷つけようとした君を許さない。』
青藍は苦しむ加賀美に休む暇を与えることなく、次々と攻撃を加える。
猫が獲物を嬲るように。
「・・・は、やっと、認めたな。」
ボロボロにされつつも加賀美はそういって笑った。


『そうだよ。君の言うとおり、僕は朽木青藍だよ。だから、君など僕の相手ではないよ。実力も、家柄も。』
「は、はは。気に入らない、な。本当に。」
『そうかい?それは奇遇だね。僕も君みたいなのは気に入らないよ。家柄しか見ないで、その人自身を見ようとはしないのだから。まぁ、貴族なんてほとんどそんなものだけれど。』
青藍は自嘲するように言った。


「・・・それが、貴族というものだろう。」
『そうだね。』
「なぜ、朽木の名を使わない?」


『僕は朽木家に生まれたことを後悔はしていないし、むしろ感謝しているくらいだ。でも、それは僕が偶然朽木家に生まれただけであって、朽木の名を振りかざしていい理由にはならない。それに、その朽木の力を使う権利は僕にはない。朽木の名を出して君の家を潰すことなど簡単だろう。でも、それを実際にやることが出来るのは父上だ。朽木の力は僕の力ではない。自分の力でないものを使って手に入れたものに、何の意味がある?』


「だから、名を隠してこんなところに居るのか?」
『そうだよ。』
加賀美の斬魄刀が弾き飛ばされる。
『僕は自分の力で欲しいものを手に入れる。だから、ここに来た。まぁ、君のお蔭で、ここにはそう長くは居られないだろうけどね。残念だよ。せっかく友達も出来たのにさ。』


青藍はそう言って斬魄刀を加賀美の喉元に突きつけた。
打撃を受けた上に青藍の霊圧が上がっているため加賀美は動くことが出来ない。
「・・・俺を殺すか?」


『君など殺す価値もない。相応の罰を受けてもらう。でも、それを決めるのは僕じゃない。父上には一度僕の我が儘を聞いてもらったからね。今回は父上に任せるよ。君も、君の家のこともね。・・・そのつもりなのでしょう、父上?そこに居らっしゃるのは解っていますよ。加賀美家のご当主もご一緒のようだ。』


青藍の言葉に、白哉と加賀美の当主が現れる。
「・・・気付いていたか。」
『はい。母上に呼ばれたのでしょう?』
「そうだ。」


『僕の用はこれで済みました。後は任せます。恋次さん、ルキア姉さまを放してもいいですよ。』
青藍はそう言って斬魄刀を鞘に納める。
それと同時に青藍の霊圧も抑えられ、硬直していた院生たちも漸く深く息をついた。


「あ、あぁ。」
恋次はそう言ってルキアを開放した。
「一体、なんだったのだ?青藍・・・。それにこれは?何故ここに兄様が?」
ルキアは混乱した様子で周りを見渡した。


『申し訳ありません、姉さま。』
そんなルキアを青藍は抱きしめた。
「青藍?」
『巻き込みました。ごめんなさい。』
小さく震えながら、青藍はそう言った。


「・・・謝ることはない。青藍は、私を助けてくれただろう?」
それに気が付いたルキアは青藍を宥めるように言った。
そして、青藍の背中に腕を回し、背中を擦る。
『・・・姉さまが、居なくなると思ったら、怖かったのです。』
青藍はルキアにしか聞こえないほどの小さな声でいった。


「大丈夫だぞ。あのくらいで居なくなる私ではない。なぁ、青藍。そうだろう?それとも姉さまはそれほど弱く見えるか?」
『・・・いいえ。姉さまはお強いです。僕なんかよりずっと。』
「ならば、そう怖がる必要はないぞ。私は青藍のそばに居る。わかったな?」
『・・・はい、ルキア姉さま。』
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