色彩
■ 13.勝ち抜き戦

カラン、と木刀が地面に落ちる。
そして咲夜の木刀が京楽の喉元に向けられていた。
「そこまで!」
浮竹が静止の言葉を掛ける。
「ふふふ。私の勝ちだな。」
咲夜は得意げに笑う。


「いやぁ、咲ちゃんも大概ずるいよね。木刀を木刀で斬るとか誰がそんなこと予想するよ・・・。」
「ふふふ。予想外なのが、私なのだろう?」
「解ったよ。降参。僕の負け。」


「よし。七緒!京楽には明日から一週間ちゃんと仕事をしてもらうぞ。」
「本当ですか!?」
咲夜の言葉に七緒の目が輝く。
「あぁ。存分に働かせてやってくれ。」


「・・・まじかよ。」
「さすが咲夜さん。」
「姉さま、流石です。」
「あの京楽隊長がこうも簡単に・・・。」
その様子を見ていた七緒以外の副隊長がため息を吐くように言った。


「というか、木刀で木刀を斬るって一体どういうことですか・・・。」
「俺、前にやられたことあるぜ。突然木刀が消えて焦ったぜ。」
「あれだけ早さを落としていて、それでも木刀が斬れるなんて一体どういうことなのよ・・・。それも相手は京楽隊長よ?木刀だからと言って、並みの斬魄刀では斬れないわ。」
「咲夜さんの木刀が普通の斬魄刀以上ってことっすね。」
「やはり、規格外なのだな・・・。」


そんなこんなで斬術の指導も終わり、いよいよ実戦形式の試合が始まろうとしていた。
「さて、皆籤は引いたかな?勝ち抜き戦でやるからね。斬拳走鬼、なんでも使っていいよ。もちろん、木刀じゃなくて斬魄刀を使ってね。審判は僕らでやるから。」
「最後まで勝ち抜けた者には、賞品もあるぞ。」


「ははは。みんな頑張れよ。」
「勝った人は私が抱きしめてあげるわ。」
乱菊はそう言ってウインクをする。
「じゃあ、一番と二番を引いた人、前に出てきてくれるかな?」


一番の籤を引いてしまった青藍は前に出た。
これ、最初の方の人が大変だよね。
僕が勝ちぬけるにはクラス全員と戦って、皆に勝たなきゃならないんだから。
「おや、一番は君なのかい?頑張ってねぇ。」
前に出た青藍をみて京楽はニヤニヤと笑った。


・・・仕組んだな。
青藍はそれに気が付いて京楽を睨む。
その様子に京楽は笑みを深め、それに気付いた咲夜と浮竹が青藍を面白そうに見つめた。


はぁ。
やるしかないか。
青藍は内心でため息を吐きつつも、負ける気はない。
この程度のことが出来なくて、父上に届くわけがないのだから。
内心でそう呟き、青藍は一つ深呼吸をする。
そして、二番籤を引いたものと、相対した。


相手はすでに斬魄刀を構えている。
だが青藍はゆったりと立ったまま、相手を見つめるだけだ。
「では、始め!」
その声と共に青藍の戦いが始まった。


「はぁぁぁ!」
相手はそう言って青藍に斬りこんでくる。
青藍はそれをするりと躱すと、相手の懐に入り込み、拳を鳩尾に叩き込んだ。
相手はそのまま気絶してしまう。
「そこまで!勝者、立花青藍!」


青藍はその後、十人程を白打だけであっという間に倒した。
そしてさらに十人程を鬼道で倒す。
その後も白打と鬼道のみで相手を倒していく。
途中、侑李や京、キリト、雪乃とも戦ったが。
そして、最後に出てきたのは、なんと、あの加賀美だった。


・・・面倒なことになった。
青藍は内心で愚痴る。
これも春水殿が仕組んだのだろうか。
そうだとしたら、最悪すぎる・・・。
そう思って青藍は京楽の方を見る。


しかし、京楽は、ただ目を丸くしているだけだった。
つまり、これは偶然ということか・・・。
仕方がないか。
青藍は諦めて、斬魄刀を抜いた。


初めて斬魄刀を抜いた青藍に周囲から驚きの声が上がる。
加賀美はというと、斬魄刀を構えたままじっと青藍を見つめているだけだった。
・・・なんだか嫌に静かだな。
「・・・はじめ!」
一抹の不安を抱えつつも青藍は掛け声とともに地面を蹴った。
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