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■ 再来B

指揮官は浮竹だから安心してね。
春水様はそう言ってこの任務に参加するように勧めてきた。
六、八、十三番隊の三隊合同の虚討伐任務。
けれど、当日になってみれば、指揮官として姿を見せたのは、浮竹隊長ではなかった。


「浮竹隊長は持病が悪化したため、本日は朽木隊長が指揮官を務められます。」
伊勢副隊長の言葉に、思わず俯く。
「急な変更ではあるが、予定通り任務を進めることとする。」
聞こえてきた彼の声に、無意識に唇を噛みしめた。


「・・・漣さん。」
虚が出現する場所への移動中、密やかに声を掛けてきたのは、伊勢副隊長。
彼女もまた、春水様から私の過去を知らされている一人なのだと思う。
上官だから知られているのは仕方ないけれど、彼女があからさまに心配そうな瞳を向けてくるのはこれが初めてだ。


「援護に回りますか?」
そうした方が良いのではと、副隊長の瞳が言っている。
今日の任務では、私は指揮官直属の班に振り分けられていた。
つまり、彼の命令を直に受ける立場で、その分、彼との距離が近い。


けれど、いつまでも隊長や副隊長に迷惑を掛けている自分に嫌気が差しているというのも本音で。
死神となった以上、彼と関わる可能性があることは重々承知していた。
このままずっと春水様や伊勢副隊長に甘え続けるわけにもいかない。


『・・・いえ。私は、死神ですから。』
自分に言い聞かせながら言えば、伊勢副隊長はちらりと視線をこちらに向けて。
「そうですか。・・・あまり、無理はしないでくださいね。」
心配そうな瞳を向けながらも、副隊長はすぐに自分の持ち場に戻って行く。


「目標地点に到着。複数の虚の霊圧を確認。この辺りを根城にしているという報告に間違いはないようですね。」
「数が多いな。・・・すぐに任務に入る。各班、散開し配置につけ。陣形が整い次第、一斉に攻撃を仕掛ける。」


彼の指示に従って皆が流れるように動き始める。
地獄蝶を通じて配置が完了した旨の声が聞こえてきた。
全ての班の準備が整えば、彼の命令が下される。
その瞬間、あちらこちらから虚の悲鳴が上がった。


「・・・来たな。」
彼が呟いた一瞬の後、夥しい数の虚が飛び出してくる。
「お前たちも行け。陣形を突破させるな。」
すぐに指示が飛んで来て、瞬歩で前線に向かう。


虚が押し寄せている一帯には、既に伊勢副隊長の班が到着しており、後方から鬼道での援護が行われていた。
伊勢副隊長の無駄のない指示によって虚の流出は食い止められている。
己も戦闘に入ろうと斬魄刀を構えた時、遠くで死神たちの悲鳴が聞こえた。


『伊勢副隊長!!』
名前を呼べば、副隊長は頷きを返してくる。
「ここは私たちが。皆さんはあちらの援護を!」
副隊長の言葉に皆が地面を蹴った。


『突破された・・・!』
数体の虚が陣形を突破して逃げていく。
速度を上げて先回りし、それら全てを斬り捨てた。
その間に他の隊士が援護に入って再び陣形を整える。


『・・・!?』
己も陣形に加わろうと体の向きを変えた刹那、背後に感じる違和感。
ぞわり、と背中が粟立つ。
振り返れば、先ほど倒したはずの虚の爪が、目の前に迫っていた。


2020.08.21
Cに続きます。


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