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■ 無意識的意識I

間に合え・・・!!
そんな願いも虚しく、子どもを抱え上げたその一瞬の隙を虚は見逃してはくれなかった。
咄嗟に斬魄刀で攻撃を受け止めようとしたが、片腕で受け止めきれるはずもなく。
凄まじい力で体ごと跳ね飛ばされた。


『・・・っく・・・。』
続いてやって来たのは、地面に打ち付けられた衝撃。
腕の中の子どもを庇ったせいで、全身に痛みが奔る。
その痛みに呻き声が漏れた。


右側頭部を打ち付けたせいで、一瞬だけ視線が定まらなくなる。
それでも何とか斬魄刀を支えに立ち上がれば、右耳に感じる違和感。
同時に漏れ出す己の霊圧。
今の衝撃で、伝令神機だけでなく霊圧制御装置まで破損してしまった・・・。


じりじりと上がり続ける霊圧を押さえつけようとするも、本調子でも抑えられないそれを、消耗した身体で抑えきれるはずもない。
子どもだけは巻き込むまいと、結界を張って、自分が前に立つ。
辛うじて折れていない己の斬魄刀を握りしめて、向かってくる虚を見据えた。


遠くに感じる隊長たちの霊圧。
あと数十秒もすれば此処まで来るだろう。
けれど、虚の攻撃はあと数秒で此方に届く。
そして、私の霊圧が尽き、魂魄を削り始めるまで、あと十数秒。


『ごめんね、白藤。痛いだろうけど、力を貸して。』
応えるように光を帯びた斬魄刀を構えつつ、右耳の霊圧制御装置を取り外す。
約束を破ってごめんなさい、父上・・・。
無茶をして申し訳ありません、朽木隊長・・・。


心の中で謝罪を述べて、虚を見据える。
此方が弱っていることを理解しているらしい虚は、嫌な笑みを浮かべてゆっくりと距離を詰めてくる。
じりじりと上がり続ける私の霊圧を感じ取っているだろうに、何の警戒もない。


・・・そう思えるだけ、この虚が、強くなっているということなのだろう。
けれど、その油断が私には有難い。
己の危機を察していないということは、隙が出来るから。
あと一歩近づいてくれれば、私の刃は必ずこの虚に届く。


『・・・搦め取れ、白藤。不死之花!!』
急上昇した霊圧を喰って、斬魄刀から藤蔓が伸びてゆく。
あっという間に虚に絡みつき、その身体を締め上げる。
虚の断末魔が、その場に響き渡った。


『た、倒した・・・。』
虚が昇華されて安堵したのも束の間、斬魄刀から伸びた蔓が、ぐにゃりと歪む。
流れ出る霊圧の量が多すぎる・・・。
消耗した身体では斬魄刀を握るだけで精一杯で、流れ出る霊圧に足元が揺れた。


隊長がすぐそこまで来ている・・・。
まだ、倒れるわけにはいかない。
命令に反して無茶をしたのだから、せめて、隊長が到着するまで、立っていなければ。
そう思うのだが、己の魂魄を削ってでも放出される霊圧に、身体が耐えられるはずもなかった。



2020.03.26
Jに続きます。


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