蒼の瞳、紅の瞳
■ 17.もしもの時は

十三番隊の高台に行くと、そこにはやはり浮竹が居た。
「ここにいたか、浮竹。」
「京楽。漣も一緒か。」
「・・・一護君、僕らを信用しているから代行証は持って帰るってさ。」
「・・・そうか。」
浮竹は京楽の言葉を聞いて脱力する。


『まったく、私は彼なら大丈夫だと言っただろう。』
「それは、そうなんだがなぁ。」
浮竹が苦笑いで答える。
「彼、成長したね。」
「あぁ。俺たちが気付かなかっただけなんだな。」
「若い子の成長は目を背けたくなるほど眩しいもんさ。」
「そうだな。」


『二人して爺さんみたいな会話をして。若さが足りなくなってきているぞ?』
「あはは。僕らもいい加減長く生きているし、隊長として尸魂界の深いところにも関わっているからねぇ。」
「あぁ。今回のことで身に染みたよ。」
京楽の言葉に浮竹が同意する。


『確かに、現世の人間にこちら側の事情を押し付けるわけにはいかないしね。私たちは尸魂界を守るもので、あの子は人間だ。どんなに大きな力を持っていても。護りたいものも護るべきものも私たちと彼では異なる。でも、私たち死神と黒崎一護は深くつながってしまった。』
「あぁ。」
『少なくとも、彼が生きている間は私たちには安息の日々はなさそうだ。彼は今後も大きな争いに巻き込まれていくだろうから。』


「僕たちは、どうすればいいんだろうねぇ。もし、意図的でなくとも彼が尸魂界に害をなすことになったら。僕は、それが心配だよ。今までのように命令に従って切り捨てられるだろうか。それを僕の良心が許すだろうか、ってね。」


「俺もだ。きっと多くの隊長格たちもそうすることを躊躇うだろう。彼は尸魂界にとって大きな存在となっている。だが、もしそうなったら・・・俺たちがそれをやるしかないんだ。」
浮竹がそう言って俯く。
「・・・辛いねぇ。」
京楽もまた笠で顔を隠した。


『なんだい、二人して弱気だね。暗い顔をするなよ。もし彼が間違ったことをしたなら私たちがそれを正せばいい。もし彼が誰かに操られることになったなら、私たちがその操っている者から彼を取り戻せばいい。』
「・・・それでも、ダメだったら?」
京楽が不安そうに聞く。


『その時は斬る。・・・それで私が責められることになってもだ。その方が彼のためだよ。あの子は自分の大切なものを守るために戦ってきた。そしてそれは、これから先も変わることはないだろう。彼がこの世界に害をなし、彼が自らの手で大切なものを壊していくのを、私は見たくない。そして彼自身も、そうした自分を許すことはないだろう。』


「咲ちゃんは、強いね。」
「そうだな。俺たちは格好悪いな。」
「本当に。」
咲夜の言葉に浮竹と京楽は情けなく笑う。


「・・・でも、そうだよね。僕たちがそうならないようにすればいいんだ。こんなに長く生きているし、ともに歩んでくれたり、痛みを分かち合ってくれたりする仲間も僕たちには居るんだから。」
『そうそう。だから、今からそんなに弱気になるな。』
咲夜はそう言って二人に笑顔を見せたのだった。
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