蒼の瞳、紅の瞳
■ 7.敵も味方もない男

浮竹は、大きな樹だ。
大地にしっかりと根を張り、天に大きく枝を伸ばし、どんなに強い風が吹いても真っ直ぐに立つ大きな樹。
日差しが強ければ日陰をもたらし、雨が降れば屋根となる。
人も動物も関係なく、その樹の周りには多くのものが集まる。


『・・・敵わないなぁ。』
「ん?」
咲夜のつぶやきに浮竹が反応する。
『いや、浮竹には敵わないなぁと思ってね。昔、京楽もそう言っていた。』
「・・・?」
『無敵って浮竹のことをいうのかもしれないね。浮竹は味方が多いよね。』


「お前にだって味方はたくさんいるだろう?」
浮竹は不思議そうに言った。
『私はさぁ、味方も多いんだけど、敵も多いんだよね。こんな性格だし、敵対心を持たれやすいんだ。おまけに面倒な能力まで持っている。』
「まぁ、確かにそうだな。」


『それで、私の敵は、敵でしかないんだ。味方になることは絶対にない。・・・でも、浮竹は敵すら味方にしてしまう。まぁ、それは、君が他人に本気で敵意を持つことが少ないからなのだろうけれど。』
「そうか?院生のころなんかはお前の近くに居ることを男どもに相当恨み言をいわれていたけどなぁ。」


『私だってそうさ。君は、異性からの好意にとても鈍いから、無駄に笑顔を振りまくし。君のファンから呼び出されたこともあったんだぞ。「浮竹君から離れて!!」ってね。』
咲夜はそう言って笑う。


「ははは。俺だって上流貴族の奴らから「漣さんに近づくな」ってさんざん圧力をかけられたさ。京楽もよくどやされていたし。」
浮竹は当時を思い出したのか苦笑いをする。


『私たちがどうこうなるはずはないのにね?』
「本当だよなぁ。俺たちは友人で、好敵手。互いに認め合ってともにいただけだったのにな。」
『そうそう。それに私たち三人は力がずば抜けていたから他の奴らでは相手にならなかった。』
「そうだな。実習はいつも俺たちだけ別メニューだったものな。懐かしいなぁ。」


そんな話をしていると、ぱたぱたと足音が聞こえてきたのだった。
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