蒼の瞳、紅の瞳
■ 6.能ある鷹は爪を隠す

「それで?あれらは森羅と同じ能力を持っているわけだよな?」
『あぁ。基本的にはそうらしい。』
「つまり、お前はまた四十六室に目を付けられることになるんじゃないか?」


『そこなんだよなぁ。もう追いかけられるのも逃げるのもこりごりなんだ。だからあの子らが私の斬魄刀であることは隠そうと思う。山じいや京楽、白哉あたりには一応伝えておくつもりだが。』
「そうだな。それがいい。俺だって、もうあんな思いはしたくない。」


『ふふふ。私が居なくなったことがそんなにショックだったのか?』
百年前のことを思い出して苦い顔をしている浮竹に、咲夜は軽い調子でそう言った。
「そう茶化すなよ。本当に落ち込んだんだぞ、俺は。」


『そうか。まぁ、次居なくなるときはちゃんと浮竹に伝えてから居なくなるよ。』
「次だ何て縁起でもないこと言わないでくれよ。」
悪戯っぽく笑う咲夜に浮竹は眉を下げて情けなく笑う。


『浮竹にはいつも心配と迷惑をかけている気がするよ。霊術院に居たときもそうだったな。』
「お前は昔から無鉄砲で向こう見ずなところがあるからな。貴族の姫とは思えなかった。それは今も疑問に思う時があるが。」
『失礼な。私だって一通りの礼儀作法は教え込まれているんだぞ。』
心外だというような表情で咲夜は言った。


「そう言われてもなぁ。俺は死神の漣咲夜しか知らないんだ。漣家は貴族の集まりには顔をみせないだろう?」
『まぁな。漣家はその能力からあまり目立つのはよくない。だから、他の貴族とはあまり関わらないんだ。さすがに格上の貴族との関わりは避けられないけどね。だから朽木家はもちろん、大貴族とは古くから付き合いがあるらしい。・・・志波家とも付き合いがあったんだ。』


海燕。
彼もまた、私の友人だったのだ。
私は彼の貴族を感じさせない凡庸さが好きだった。
陽だまりのような人だった。


「そう暗い顔をするな。」
『でも、私は何もできなかった。海燕が死んだときも、それでルキアが苦しんでいるときも、浮竹や他の隊員たちが悲しんでいるときも。』
俯く私の頭に大きな手が乗せられた。


「俺たちは多くの死を見てきている。俺たちがそれを背負っているのは確かだ。俺は死んでいった仲間たちを忘れることはできないだろう。確かに悲しい思いもした。だがそれは悲しいばかりではない。俺はなぁ、みんなが見守ってくれていると思うと心強い。お前もそうじゃないのか?」


『・・・そうだな。海燕のことだから、いつまでも暗い顔をしていては怒られてしまうな。』
「確かに。今度、墓参りにでもいくか。朽木も連れて行こう。それで、いろんな話をして笑顔を見せてやれ。その方が海燕もきっと喜ぶ。」
そういって笑顔を向けてくる浮竹。


『あぁ。』
咲夜もつられて笑顔を見せる。
「全く、お前は適当かと思えばやたらと繊細だったりする。そういうところは相変わらずだな。」
『あはは。浮竹は私のことをよくわかっているな。だからこうして時々弱音を口にしてしまう。いつも悪いな。』
「かまわないさ。お互い様だろう。」
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