蒼の瞳、紅の瞳
■ 3.森羅の真実

『いい天気だ。夏の盛りは過ぎたが、まだ残暑が厳しいな。』
「そうですね。浮竹隊長のお体に障りがないと良いのですが。」
『ははは。そうだな。まぁ、まだ食欲があるようだから大丈夫だろう。』
朽木家を出て、ルキアと話しつつ隊舎へ向かっていると、突然目の前に誰かが現れた。
『うわ。なんだ?』
「涅副隊長?」


「おはようございます。漣咲夜さま、マユリ様がお呼びです。」
『マユリさんが?』
「はい。すぐに技術開発局の研究室まで来るようにとのことです。」
なんだろう?斬魄刀のことかな。
『わかった。すぐに行く。ルキア、浮竹に遅れると言っておいてくれ。』
「はい。」
咲夜はルキアの返事を聞くと、すぐにマユリのもとへ向かった。


「よく来たネ。これを見給え。」
研究室に着くと、マユリは咲夜にあるものをみせた。
『これは・・・?何か芽が出ているようですが?』
「君が持ってきた森羅の欠片だ。あの後霊圧を与えてみたのだ。するとすぐに変形をはじめ、種のような形になった。そして、今朝見てみたら、芽が生えていたのだヨ。」
『ではこれは森羅なのですか?』
「そうだとも、そうでないともいえるネ。」
『どういうことです?』


「確かにこれは森羅の欠片からできたものだ。そういう意味では森羅だが、森羅の霊圧とは違う霊圧だ。そういう意味でこれは森羅ではない。これは霊圧を喰う。恐らく、霊圧を喰うことで成長し続ける。」
『森羅が暴走したのは森羅の力が大きくなりすぎて制御できなくなったからです。ということは、死んだ持ち主の力を吸収するだけでなく、森羅は自らの持ち主の霊圧を喰い続けていたということですか?』


「そう考えるのが妥当だネ。そして森羅が喰う霊圧は持ち主のものだけではなかった。主が関わった相手の霊圧も喰っていたと考えられる。それ故、森羅という斬魄刀はあらゆる能力を司ることが出来ていたのではないかと私は考えているヨ。」
『では、これは森羅のもとになっていたものということですか?』
「そのようだネ。」


『つまり、森羅は死んでいない?成長したらこの前と同じようなことが起こる可能性があるということですね?』
森羅が、死んでいない。
喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか。
「そうだ。暴走するほど力が大きくなるのは気が遠くなるくらい先の話だが。そうだネ、常に卍解でもして霊力を放出していれば、暴走することもないだろう。」


『あはは。軽く言ってくれますね。』
「森羅という斬魄刀の持ち主は皆卍解ができるのだろう?それにも関わらず、君は隊長になるのを拒否していたようだが。」
『そんなことまで知っているんですね。』
咲夜は苦笑する。


「ふん。ネム、あれを持って来い。」
「はい。マユリ様。」
『・・・これは!?』
「阿近が森羅の型をそのまま再現して作った刀だ。ただ刀の形を模っただけのものだからこのままでは使い物にはならないが。この刀と、これを融合させれば、森羅が再び現れるだろう。もっとも、元の森羅と全く同じとは限らないがネ。・・・だが、問題が一つある。」


『なんです?』
「一度森羅を手放した君にそれを制御することができるのかどうか。」
『そう、ですよね。私はこの手で森羅を殺した。・・・父とともに。』
あの日のあの時の光景が思い出される。


「だが森羅は長い間漣家の者しか主とすることはなかった。恐らく、制御するためには漣家の血筋であることが必要なのだ。そして、いま、漣家の中で森羅の主となることが出来そうなのは君しかいないのだヨ。君の家系の者を調査してみたが、君ほどの霊圧とそれをコントロールすることができるセンスを持っているのは君しかいない。」


『・・・制御して見せます。もう二度とあんな思いはしたくない。』
「そうかネ?では、この刀を持って、その種を刺し給え。刀がその種の力を吸い取るだろう。」
『行きます。』
そういうと、咲夜は刀を突き刺した。
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