蒼の瞳、紅の瞳
■ 38.変化と不変


あれこれと無邪気に聞いてくる理吉に応えていると、隊主室の扉が開いた。
「・・・何をしている。」
「た、隊長!」
白哉の登場に理吉の顔色が真っ青になった。
どうやら仕事中であることを忘れていたらしい。


『やぁ、白哉。おかえり。無事なようだな。待っていたんだ。彼にはその間話し相手をしてもらっていた。』
「そうか。理吉、お前は恋次のところに行け。地獄蝶を片付けて来い。今日の仕事はそれで終わりで良い。恋次にもそう伝えておけ。報告書は私がやっておくとも。」
「は、はい!解りました!失礼しました!!」


理吉が頭を下げて隊主室から出ていくと、白哉は咲夜を見た。
『なんだい?』
「・・・仕事はどうしたのだ。」


『手伝うと言ったのだがなぁ。浮竹の友人であることが知れてしまったから、皆が遠慮して私に仕事をさせてくれないのだ。それに今日はこんな格好もしているからな。だから早々に抜け出してきた。その方が隊士たちも仕事がしやすいだろう。』


「我が隊に来れば思う存分仕事をさせてやるが?」
咲夜にそう問いつつ、白哉は机に向かって報告書を書き始めた。
『あはは。それは嫌だ。私はそんなに仕事好きなわけじゃない。』


「それで?何をしに来たのだ?」
『抹茶が飲みたい。点ててくれないか?』
「なぜ私が・・・。」
『いいじゃないか。ほら、七味煎餅を買ってきてやったぞ。』
そう言って七味煎餅の入った袋を掲げる咲夜の表情をみて、白哉はため息をついた。
断っても引いてはもらえなさそうだ。


「・・・はぁ。わかった。少し待っていろ。これが終われば今日はもう帰る。」
『ふふふ。さすが白哉!!』
「騒ぐな。大人しくしていろ。」
『はいはい。』


『大きくなったなぁ・・・。』
報告書を作成している白哉を見ていた咲夜はポツリとそう呟いた。
「何がだ?」
それを聞いた白哉が問う。


『あれ?声に出していたか。君のことだよ。知らないうちに背も伸びて逞しくなった。』
「百年も姿を見せないからだ。」
『あはは。君を見に行こうと思ったこともあったが、君には見つかる気がしてな。』
「そんなことをすれば、私はすぐに兄を見つけた。」
『私の予想は当たっていたわけだ。』


「兄は昔から隠れ鬼が下手なのだ。」
『君がすぐに見つけてしまうからな。君は、私を必ず見つけた。浮竹や京楽でさえ、隠れた私を見つけることは稀だったのに。・・・しかし、あの白哉が隊長か。百年間で色々と変わるものなのだなぁ。』


「・・・兄は百年たっても変わらないな。」
『私は変わっていないか。』
「あぁ。見た目も中身も変わっておらぬ。何一つ。」
『そうか。』
「そうだ。」
[ prev / next ]
top
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -