蒼の瞳、紅の瞳
■ 34.謝罪


十三番隊舎に到着した咲夜は隊舎の門をくぐって、執務室に向かう。
扉を開けるとそこには机に向かって書類整理をする隊士たちがいた。
戸を開けた人物に気が付いたのか、数人がこちらに目を向ける。
「あの?何かご用ですか?」


声をかけてきたのはこの春、私とともに入隊した同期だった。
だが、女の格好で死覇装すら着ていないためか、気付いた様子はない。
ちなみに今は白衣(びゃくえ)に緋袴、その上から羽織を羽織っている。
私の私服である。
袴の方が動きやすいため、普段から袴をはくことが多いのだ。
そして、頭には貴族の証である牽星箝。


牽星箝などつけたのは久しぶりだ。
だが、死覇装を着ていない以上、貴族の服装をしていた方が動きやすかったのだ。
隊長格に会うには、貴族であるほうが会いやすいし、隊士たちもすぐに案内してくれる。
まぁ、窓から勝手に侵入することが多いため、死覇装でも良かったのだが。


『あぁ、仕事中済まない。浮竹は居るだろうか?』
自らの隊長を呼び捨てにした女を、その隊士は怪訝そうに見ながら答えた。
「隊長は雨乾堂にいらっしゃいますが・・・。」
『なんだ。また体調を崩しているのか?』
隊士からの視線を気にすることなく、咲夜はそう言った。


「いえ。今日は調子が良いようでしたが、三席が心配して無理をするなと休ませているのです。」
『そうか。ありがとう。』
咲夜はそういうと、その隊士に背を向けて歩き出した。
「え?あの!勝手に行かれては困ります!」
隊士の呼び掛けに咲夜は立ち止まってこたえる。


『気にするな。私は浮竹の古くからの友人だ。そして気付いていないようだが、私は十三番隊にこの春入隊したばかりの新人で一応君の同期だよ。立花翠蓮という名に覚えはないか?』
「なるほど。では、貴女が漣咲夜さまなのですね。」
『・・・ん?何故それを知っている?』
隊士から出た言葉に咲夜は振り返った。


「隊長がおっしゃっていました。「自分の同期が十三番隊に居る。訳があって姿と名を変えていたが、もうすぐ本来の姿で我が隊に戻ってくることだろう。騙された気分になる者もいるだろうが、どうか彼女を責めないでやってくれ。これからはきっと君たちの心強い味方になってくれるだろうから。」と。」


『・・・そうか。浮竹がそんなことを。では、私は今ここに居る隊士たちに挨拶をせねばならんな。』
そう言って踵を返すと、咲夜は執務室の中に入った。


『みなさん、お仕事中失礼いたします。私は漣咲夜と申します。本日付で正式に十三番隊の一員となりました。よろしくお願いいたします。』
咲夜の名を聞いて隊士たちはざわめき出した。


『・・・立花翠蓮と名乗り、男の格好をしてあなた方を騙すようなことをしておりました。深く、お詫び申し上げます。』
咲夜はそういうと、深く頭を下げた。
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