蒼の瞳、紅の瞳
■ 32.鬼と妖怪白玉団子


後は十二番隊と十三番隊か。
もう夕方だ。
挨拶だけで一日が終わってしまう。


『失礼しますよっと。』
咲夜は開いていた窓から技術開発局に侵入した。
いつ来ても薬品くさいなぁ。
「あれ?咲夜さん?」
そう声をかけられて振り向く。


『あ、こん?』
「そうです。久しぶりっすね。生きてたんですか?」
『うわぁー。阿近が大きくなってる!なんで!?前は私の腰ぐらいしかなかったよな?』
「いつの話してんですか。百年もたてば背ぐらい伸びますよ。」
阿近は呆れたように言う。


『っていうか、これなに?角?生えたの?それとも生やしたの?うわ、柔らかい。』
そういって、阿近の角を指で押している。
「やめてくださいよ。」
阿近は鬱陶しそうに咲夜の手から逃れる。
『いやぁ。悪い悪い。久しぶりだな、阿近。』
「そうですね。で?なんでこんなところに居るんです?」


『私今日から死神に戻ったんだ。その挨拶にね。今の隊長ってマユリさんだよな?』
「はい。今ならたぶん研究室に居ますよ。こっちです。」
そういって、背を向ける阿近についていく。


「失礼します。局長、お客さんです。」
「なんだネ?私は忙しいのだよ。」
背を向けたまま、マユリはそう答える。
『ま、マユリさん?・・・妖怪白玉団子じゃなくなってる。』
咲夜の言葉にマユリは椅子ごと振り向いた。


「なんだ、君かネ。戻ってきているのは解っていたヨ。斬魄刀を失ったことも。」
『ふふふ。お久しぶりです。情報が早いですねぇ。』
「ふん。私に隠し事など無意味なのだ。」
『それで、死神に戻ることになりまして・・・。』
「で?」


『刀を一振り作ってはいただけませんかね?できれば森羅と同じ型のものを。斬魄刀でなくとも、ないよりはあった方が戦いやすいですし。まぁ、鬼道だけでもそれなりに戦えるのですが。』
「ふむ。見ての通り私は忙しい。阿近。作ってやり給え。」
「はい。じゃあ、斬魄刀の資料を閲覧してもいいでしょうか?」
「好きにしろ。」


『ありがとうございます。阿近、よろしくね。』
「はい。まぁ、やってみますよ。」
阿近はそういうと森羅の資料をもってマユリの研究室から出て行った。


「・・・で?まだ何か用かネ?」
研究室から出ていく様子の無い咲夜を見てマユリが問う。
『・・・消えない斬魄刀ってあると思いますか?』
咲夜は唐突に切り出した。
「ふむ。基本的に斬魄刀は持ち主が死ねば消えるはずだヨ。」
『では、持ち主が生きていれば斬魄刀は消えないということでしょうか?』


「それは君の斬魄刀について言っているのかネ?」
『はい。・・・これを見てください。』
咲夜はそういうと、懐から巾着を取り出した。


『これは森羅が砕けたものです。京楽たちが拾い集めてきてくれたのですが、ずっとこのままなのです。でも、森羅の気配はもうありません。』
マユリは巾着の中身を見た。


「ふむ。興味深いネ。そもそも森羅という斬魄刀は、持ち主が死んでも消えずに、次の主を待つという珍しいものだ。そしてその能力は生死をも司る。だからまだこれは生きているという可能性もある。だが、これは刀身から柄まですべてが砕けている。斬魄刀は持ち主の回復によって再生するが、ここまで砕けた斬魄刀が再生したという例は見たことがないヨ。斬魄刀が砕けた死神は戦いに敗れてほとんど死亡してしまうからネ。」


『そうですか・・・。それはマユリさんに預けておきますね。研究するならご自由にどうぞ。私の刀をつくるのに必要ならば、使ってください。では今日はこれで失礼します。』
「なにか解ったら連絡するヨ。」
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