蒼の瞳、紅の瞳
■ 29.一歩ずつ進めばいい


『いやぁ、苦労してるんだねぇ。』
「ったく。あいつ今月減給にしてやる。」
冬獅郎はそう言いながら乱菊が隠そうとしていた書類を手に取り、机の上まで持っていく。


『ふふふ。でもやってあげるんだ?』
「他隊には迷惑かけらんねぇからな。」
『そっか。えらいね。私が副隊長のときも隊長が私の分まで手伝ってくれていたよ。』
「・・・お前もサボり魔だったのか。」


『そんなことないさ。隊長は仕事が早くてね。自分の仕事が終わると、私や他の隊士に声をかけて仕事を引き受けていたんだ。みんなが定時に帰ることができるようにって。私たち死神は、いつ命を落とすかわからない。だから、大切な人たちといられる時間をちゃんと作りなさいっていつも言っていた。』


「そうか。すげぇ人だったんだな。・・・俺はまだまだだ。」
冬獅郎は俯く。
『冬獅郎。君はまだ若い。まだ未熟だ。』
「わかってる。」


『でも、焦る必要なんかないんだよ。一歩ずつ進んでいけばいいんだ。それでいい。』
その一歩が大切なこともあるのだ。
「・・・でも、俺は・・・隊長なんだ。」
そう言って顔をあげた冬獅郎の瞳は揺れていた。


『そうだね。隊長には責任がある。大人である必要もあるだろう。でもね、たまには誰かに甘えなさい。私でもいいし、浮竹や京楽だっていい。君の焦りや不安をきちんと受け止めてくれるだろう。一人で大人になろうとするな。・・・いいね?』
「・・・はい。」


『よし。いい子だ。それじゃあ、私は行くよ。たまには仕事を手伝ってやろう。私は浮竹の世話係だから、余裕があるんだ。必要だったら呼んでくれていいからな。』
咲夜はそう言って冬獅郎の頭をもう一度撫でると窓から出て行ったのだった。
[ prev / next ]
top
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -