蒼の瞳、紅の瞳
■ 28.恒例の叫び


変わらないな。
懐かしい。
咲夜は隊主室を見回してそう思った。
隊長と居た頃を思い出す。
そういえば、本棚の後ろにお酒を隠していたんだっけ。
まだあるのかな。
咲夜はそんなことを思い出して本棚へ向かった。


『えっと、確か此処に・・・。』
そういって、本棚の奥に手を伸ばす。
『あれ?どこだったっけ・・・。』
そうしてがさごそと本棚を探っていると、
「うん・・・?まつもとか?うるせえぞ。」
そう言って冬獅郎が目を覚ました。


「ん?先生!?・・・なにしてるんすか?」
『やぁ、冬獅郎。よく寝ていたね。ちょっと探し物を・・・。』
「あぁ、そのあたりに隠してあった酒なら、前の隊長が見つけて呑んでましたよ。」


『なんだって!?私の秘蔵の酒だったのに。誰だそれは。』
「志波一心ですよ。」
『ん?一心だと?・・・あいつ。後で殴りに行ってやる。』


「で?なんでここにいるんすか?」
『そうだった。冬獅郎、この前はありがとう。助かったよ。』
咲夜はそう言って頭を下げた。
「いいっすよ。そんなの。そんなこと言うためにわざわざ来たんすか?」
『そうだけど?あと、私死神に戻ることになった。これからよろしく。隊長様。』
「へぇ。そうすか。」


『なんだ。嬉しくないのか。』
「いや?先生らしいな、と。」
『そうか?』
「四十六室に追われたのに死神に戻るなんてそうできることじゃないっすよ。」
『きみだって、四十六室とはいろいろあったじゃないか。それなのに隊長にまでなっている。』


「まぁ、そうですけど。」
『私はね、ここに居たいんだ。君たちが居る此処が好きなんだ。ずっと、ここに戻りたかった。』
「まぁ、あんたがそれでいいならいいんじゃないすか。俺はそう思います。」
『・・・ふふふ。』
「何笑ってんすか?」
突然笑い出した咲夜に冬獅郎は怪訝な顔をする。


『いや、君が隊長とはなぁ。私は嬉しいよ。それから、もう先生と呼ぶのはやめてくれ。咲夜でいい。敬語もいらない。君はもう隊長なんだから。』
そういいつつ、咲夜は冬獅郎の頭を撫でた。
「・・・言っていることとやっていることが一致していないんだが。」
『ふふふ。いいじゃないか。強くなったなぁと思ってな。』


「・・・あら?隊長、起きたんですか?」
「松本。」
「隊長が大人しく撫でられているなんて珍しい。」
「これはっ。」
乱菊の言葉に冬獅郎は焦ったような声を出す。


「そうしていれば隊長って可愛いのに。」
『うん。可愛いよね。このサイズ感といい。冬獅郎、抱っこしていい?』
「・・・嫌に決まってんだろ。」
なんか反抗期だ。
昔は抱っこさせてくれたのに。


『えぇ〜。いいじゃん。それより、身長伸びてるの?あんまり変わらない気がするんだけど。』
咲夜は冬獅郎の頭を撫で続けながらそう問う。
「伸びてるっつーの。いい加減やめろ。それより松本、書類整理は終わったんだろうな?」
咲夜の手を振り落としつつそう言った冬獅郎の言葉に乱菊の動きが止まる。


「・・・も、もちろんですよ〜。当たり前じゃないですか。」
「じゃあ、その足元にある白い山はなんだ?まさか、隠そうとしてんじゃねえだろうな?」
「そんなことしませんってば。じゃあ、あたし、出かけてきますね。」
乱菊はそういうと、あっという間に居なくなってしまった。


「松本―!!」
そしてまた、いつものように冬獅郎の叫びが隊舎に響き渡るのだった。
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