蒼の瞳、紅の瞳
■ 19.巫女の涙


あれから一週間。
咲夜は救護詰所で目を覚ました。
『こ、こは四番隊?私は、どうして・・・。』
「目が覚めたか。」
『白哉?っ痛。』
起き上がろうとしたが体中が痛んで起き上がることが出来なかった。


「まだ寝ていろ。一週間も眠りづけていたのだぞ。」
『そんなに?・・・私はどうしたの?』
よく見ると、体中に包帯が巻かれている。
「急に意識を失ったのだ。卯ノ花隊長によれば、精神がひどく傷ついていると。」


『・・・そう。もう、森羅は居ない。私はこれからどうすればいいのだろう。』
「好きにすればよい。総隊長殿が四十六室に森羅と剣の巫女の力が消失したことを報告したようだ。もう、そなたは誰にも追われることなく生きられる。」
『そうか。私はもう逃げずともよいのか。』


やっと、私は自由になったのか。
ただ、私にはもう森羅も父上も居ない。
私が殺したのだ。
この手で。


「それから、天音殿が鏡夜殿の名を漣家に戻した。お前を殺そうとはしたが、結果的に鏡夜殿のおかげで漣家は大きな災いを招かずに済んだのだからな。じきに鏡夜殿の墓を設けるとおっしゃっていた。」
『そうか。叔母上が・・・。』


「鏡夜殿は天音殿の兄君でもあるからな。天音殿も心配してずっと探していたようなのだ。」
『そうだったのか。・・・父上は、笑って死んでいった。叔母上にも、それを伝えたい。叔母上から兄を奪ったのは私だから。私は、そんなことしか出来ないのだな・・・。』


父上。
私は、貴方を不幸にした。
それなのに、父上は・・・。
咲夜は父の最期を思い出して泣きそうになった。
その様子を見て、白哉は咲夜の目を掌で覆う。


『びゃく、や?』
突然視界を覆った掌に咲夜は戸惑った声を出す。
「泣けばいい。肉親を、斬魄刀を失ったのだ。ここには私しかおらぬ。」
『白哉のくせに、生意気だな。』
咲夜は憎まれ口を叩いたが、暫くすると嗚咽を漏らしながら泣き始めた。
白哉の手のひらに涙の感触が伝わる。


『・・・ふたりは、もう、いないんだ。わたしが、けして、しまった。』
「あぁ。」
『たいせつ、だったのに。』
「知っている。」


『・・・さみしい、もの、なんだな。』
「そうだな。」
『わたしは、うまれてきては、いけなかった、のだと、おもっていた。』
「そんなことはない。」
『あぁ。そうだった。ちちうえは、わたしを、あいして、くれていた。』
「そうだ。」


『わたしは、それが、うれし、かったのだ。わたしは、ここにいて、いいのだな。』
「当たり前であろう。誰も兄を不要だなどと思ってはおらぬ。私も、ルキアも浮竹や京楽たちも皆兄を必要としているのだ。」
『そう、だな。びゃくや、ありがとう。』
それからしばらく咲夜は泣き続けたのだった。
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