蒼の瞳、紅の瞳
■ 16.大切なもの


咲夜は白哉の手を強く握りしめた。
『白哉、ありがとう。そばに居てくれて。』
咲夜は小さくそう呟く。
そして覚悟を決める。


この手を、白哉を、浮竹や京楽を、守るためならば、私は・・・。
『・・・もう大丈夫だ。浮竹、京楽、ありがとう。私は決めたよ。・・・森羅を消す。』
そう言った咲夜の目には迷いはなく、いつもの澄んだ強い瞳になっていた。



「・・・そっか。決めたんだね。」
『うん。』
京楽の問いに頷く。
「私たちも戦うぞ。」
「そうですよ、咲夜殿。」
その声に振り向くと白哉とルキアが真っ直ぐにこちらを見つめていた。


『白哉!?ルキアも。』
「兄は忘れたのか?私は、一人で何でも背負うなと言ったはずだ。」
『でも・・・。』
それでは、皆を巻き込んでしまう。
傷つけてしまう。
わたしの、せいで。


「ここに居る者たちは皆兄の味方だぞ。信用しろ。頼れ。兄の隊長だけでは歯が立たなかったかもしれぬ。だが、ここには多くの隊長格が居るのだ。」
白哉は真っ直ぐに咲夜をみていった。


「朽木隊長の言う通りや。」
突然聞き覚えのある関西弁が聞こえてくる。
異変を感じてやってきたのだろう。


「一人でやろうとすんなや。さみしいやんけ。」
「僕らだって君の力になりたいんだよ。」
『真子さん、ローズさん。』
「そうだ。俺だって、隊長になったんすよ。松本、後ろは任せたぞ。」
「任せてください。隊長。」
『冬獅郎。松本副隊長。』


「まったく、その性格は何時になったら治るんでしょうね。」
「ほんとだぜ。俺たちだって副隊長なんだ。少しぐらい頼ってください。」
「まぁ、それも先生らしいけどね。」
「そうだな。」
『イヅル、恋次、桃、修兵。』


「もちろん、僕らも戦うよ。ねぇ、浮竹、七緒ちゃん。」
「あぁ。」
「はい。」
「咲夜、儂らは結界を張っておく。隊員たちを巻き込まぬようにな。」
銀嶺の後ろには元柳斎と卯ノ花が控えていた。
『お爺様。山じいに烈さんも。』


みんな、いる。
私には仲間がいる。
大切なものがある。
これまで私が気付かなかっただけで、これほど、大切なものがあったのだ。
私は、それを守る。


『副隊長たちは虚の方の始末を頼む。冬獅郎、指揮を頼むぞ。』
「「「「はい。」」」」
そう言って彼らは虚たちに向かってゆく。
彼らの背を見送って、周りに居る隊長たちを見回す。


『皆さんは森羅を。私はこれから始解をして、森羅をなるべく抑えます。森羅は天地のすべてを司るもの。攻撃を打ち消すことなど容易にやってのけるでしょう。ですが、それには限界があるはず。攻撃を続けてください。・・・皆さんのお力をお借りします。よろしくお願いします。』
そう言って咲夜は頭を下げた。


「ようやく、他人に頼ることを覚えたようだな。」
白哉はそういうと森羅に向かっていった。
「よし。行くかぁ、浮竹。」
「あぁ。」
「よっしゃ、やったるわ。いくで、ローズ。」
「そうだね。」


白哉を見て、他の隊長たちも次々と森羅に向かっていく。
みんな、ありがとう。
私はやるよ。
森羅を消すことは辛いけれど、みんなが居るから私は大丈夫だ。
私は一人じゃない。
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