蒼の瞳、紅の瞳
■ 15.私のすべきこと


森羅を消す?
私が?
私がそれをやるの?
『できない。だって、森羅は私の・・・。』


「お前にしかできないのだ。俺はもう、なんの力もない。俺では無理なのだ。この、虚を取り込むことでやっと生きながらえている俺では。・・・酷なことを言っているのは解っている。本来ならば俺はお前にこんなことを頼める立場ではないことも。俺は、お前を殺そうとしたのだから。俺はどうなってもいい。だが、このままではすべてを壊してしまうだろう。森羅がそうしてしまうだろう。」


後悔と絶望がないまぜになったような父の表情。
全てを壊す。
この私を支えてくれる温もりも、私を心配してくれていた優しい人たちも?
『・・・浄化ではだめ?』
咲夜はそう問うた。
鏡夜はその問いに首を横に振った。


「もう遅い。それに、今後、お前以上の器を持った者が現れる保証もない。それならば今消す方がいい。自分がつらいからと言って問題を先延ばしにしてはいけない。それではいつかすべてが崩れてしまう。」


咲夜は混乱していた。
私は、私はどうしたらいいの?
どうすべきなの?
わからない・・・。
何も、考えられない。
怖い・・・。


そう思って白哉の手をつかんだ。
「大丈夫だ。私は、ここに居る。」
白哉は落ち着かせるように言った。
『・・・どう、しよう。怖い。私、は、もう、失いたくないのに。』
隊長を殺したのは、森羅で。
私は隊長を殺した人を探していて。
森羅はいつも私に力を貸してくれて。
どちらも大切で。


でも、森羅を止めなければ、皆、皆居なくなってしまう?
・・・白哉も?
この手が冷たくなってしまうの?
あぁ、遠い。
またみんなが遠くなってしまう。


すると、二つの気配が近づいてきた。
「咲ちゃん。」
「漣。」
『京楽?浮竹?』
「咲ちゃん、落ち着いて。大丈夫。君は一人じゃないよ。」
「そうだ。漣らしくないぞ。そんな情けない顔をするなよ。」
浮竹はそう言って咲夜の頭を撫でた。


安心する。
温かい。
他人を拒絶していた私の心を溶かしてくれた温かさだ。


そうだ。
私は、もうあの頃の私ではないのだ。
こんなに近くに大切なものがあるじゃないか。
咲夜は、瞳を閉じて深呼吸をひとつした。


頭を撫でる温もりも、手から伝わる温かさも、優しい声も。
全部、ちゃんと私の手の届くところにある。
私の声も、届く。
混乱していた頭が整理されていく。
私がすべきこと。
それは・・・。
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