蒼の瞳、紅の瞳
■ 14.暴走


『うそ・・・。』
咲夜はふらり、と一歩下がった。
倒れてしまいそうだった。
すると、後ろから彼女を支える温もりがあった。
咲夜はその温もりを見上げた。
それは純白の衣を着た、漆黒の髪を持つ人。


『びゃく、や?』
「何をしているのだ。しっかりしろ。」
いつの間にか虚の方の始末はついていたらしい。
他の隊長格たちもこちらの様子をうかがっているようだ。


『だって、隊長は森羅が・・・。わたしの、せいだ。』
咲夜は泣きそうになった。
「取り乱すな。」
白哉は静かに言った。


「これでわかっただろう。森羅がどのようなものなのか。」
『森羅・・・。どうして?』
私が、隊長を大切に思って居たことを森羅は知っているはずだ。
宗野隊長がどれほど私を守ってくれていたかも。
全部、全部森羅は知っているはずだ。


「・・・悲しいのはお前だけではないのだぞ。・・・宗野春雪は俺の友だった。春雪は俺が漣家から追放されて、死んだことになっていても俺を受け入れてくれた。あの日、春雪は俺とお前を会わせ、そこで話をする機会を作ってくれたのだ。しかしあの日、森羅はお前の器からあふれ出てしまった。そのあふれ出た部分だけでも、隊長でさえ歯が立たなかった。お前もまた、暴走した森羅によって傷ついていた。そして、森羅は春雪を・・・。」
鏡夜もまた、涙をこらえているようだった。


「そう。宗野春雪は私よりも弱かったのよ。私はあの人が気に入らなかった。主は気に入っているようだったけれど。あの人も、あの人の斬魄刀も私に応えなかった。私に対して心を閉じていた。それにあの人は私を、森羅という斬魄刀を消そうとしたのよ。だから、私が殺してやったの。」


森羅はまた狂ったように嗤う。
それに反応してか、閉じたはずの空のひび割れがまた開き始めた。
「あはは。楽しいですわ。こんなに自由に力を使えるなんて。ねぇ主、私が憎い?あなたの隊長を殺した私が憎いの?」


咲夜は森羅が解らなくなっていた。
ずっと、生まれたときからそばに居たはずなのに。
『・・・わからない。私は誰も憎んでいない。ただ、真実を知るために私はずっと探していた。』


その間にも空のひび割れが広がってゆく。
「咲夜!もう時間がない。森羅の暴走が始まった。早く、森羅を消すんだ。それはお前にしかできない。」
父の叫び声に、体温が急速に下がっていくのがわかった。
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