蒼の瞳、紅の瞳
■ 11.誘き寄せる


空気が、変わっていく。
浮竹もまた、それを感じ取っていた。
自分たちがいつも生活している場所のはずなのにどこか知らない場所のようだ。
不純物がすべてなくなっていく。


まだ夏の盛りであるのに、真冬のような、張りつめた空気を感じる。
しかし、舞台で舞う二人は、春の日差しの中をひらひらともつれ合いながら飛んでゆく蝶のようであった。
美しい。


「いやぁ、美しいねぇ。」
舞に見とれていると隣に居る京楽がそう呟いた。
「あぁ。」
浮竹は舞から目を離さずに答える。


「それで、あの舞手のうち一人は咲ちゃんだとして、もう一人は誰だと思う?」
「さぁな。だが、あれは白哉との組手のようにも見えるな。」
そこで浮竹が気付く。
「そういえば、白哉が居ないな。」
「あれ?本当だ。彼なら来ると思うんだけどねぇ。銀嶺殿まで来ているようだし。」


「・・・まさか、な。」
浮竹は思ったことを打ち消す。
あの白哉がそんなことをしているはずがない。
「もしかして・・・。」
京楽も同じ考えに至ったらしい。
「あれは朽木隊長だったりするのかな?」


「さぁ、場が清められていてよくわからないな。霊圧すら感じられない。ただ、もしそうであるならば、銀嶺殿がここに居ることに説明がつく。恐らく、面白がって来たんだろう。」
「確かにねぇ。まぁ、なんにしても美しい舞だねぇ。隊員たちも集まってきたようだよ。」


京楽にそう言われて、後ろを振り返ると、いつの間にか大勢の隊員たちが舞を見物していた。
「漣が斬魄刀を呼んでいる。」
「うん。さっきから僕の斬魄刀がもっと近くに行きたくてそわそわしているよ。」


咲夜は待っていた。
父が現れるのを。
もうすぐ、舞も終わってしまう。
来い。
早く、私はここに居る。


そう思った時だった。
突然、空が割れた。
そして、その穴から多くの虚たちが流れ出してきた。
その様子に、楽の音が止まる。
白哉もまたそれに気が付いたようだ。


まずい。
隊員たちを巻き込んでしまう。
『浮竹!京楽!隊員たちの前に結界を!!今すぐだ!』
そう叫んだ咲夜に二人はすぐに結界を張り、隊員たちを守るように立った。
他の隊長格たちも臨戦態勢に入っている。


咲夜は頭巾を外した。
私の顔を見てまだ会いに行っていなかった冬獅郎や修兵、桃たちが驚いた顔をしている。
『お爺様!叔母上をお願いします!』
「わかっておる。」
叔母上はお爺様と山じいのもとに居るから問題ないだろう


『冬獅郎、あの裂け目を凍らせろ。これ以上大きくなると面倒だ。修兵、イヅル、恋次、桃、ルキア!!君たちはすでに出てきている虚たちを斬れ。冬獅郎の援護をしろ。急げ!』
そういうと彼らはすぐに行動に移った。
白哉はすでに鬼道で応戦している。


森羅。
(はい、主。)
千本桜を白哉のもとへ。
(承りました。)



*単行本派な上、本日原作71巻を読みました。
伊勢家と設定が被って居ることに少々震えております。
しかし、原作とは一切関係がありません。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
2016.03.15 shirayuki

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