蒼の瞳、紅の瞳
■ 10.斬魄刀鎮めの儀


「・・・それでは、漣家による斬魄刀鎮めの儀を執り行わせていただきます。」
そういって、漣家の当主は一礼して舞台から降りた。
冬獅郎は、漣と聞いて一人の人物を思い浮かべていた。
しかし、当主とあいつは似ていない。


瞳の色は同じだが、彼奴の髪は漆黒で、あの当主の髪は金色だ。
血縁者ではないのだろうか?
だが、今この場を支配している空気の感じはあの人が時折見せる、澄んだ清浄な雰囲気と似ていた。


そんなことを考えていると、松本が話しかけてきた。
「隊長〜。これって何なんです?なるべく参加するようにって回覧が来ましたけど。」
「斬魄刀を鎮めるんだとよ。・・・最近、斬魄刀がなんとなく落ち着いてねぇだろ?」
「確かにそうですけど・・・こんなので落ち着くんですかね?」
「さぁな。」


そう答えつつ他の隊長たちの様子をうかがう。
浮竹や京楽、総隊長に卯ノ花はどこか楽しそうだ。
何故元六番隊隊長まで居るのだろうか。
総隊長と穏やかに談笑している。


「朽木が居ねぇな。」
冬獅郎は呟いた。
「あら?本当ですね。貴族の儀式ですから絶対に居ると思ってカメラまで持ってきたのに。」
松本が残念そうにそう言った。


「なんでカメラなんか持ってきてんだよ。」
「嫌ですねぇ、隊長。これは稼ぐチャンスなんですよ。隊長格がこれだけ揃うなんて珍しいんですから。この様子を写真に収めて売り出せば、間違いなく儲かるでしょう?」


当然のように言われて頭を抱えたくなる。
あぁ、こいつはそういう奴だった。
冬獅郎はいつも思う。
なぜこんなやつが自分の副官なのだろうか、と。
・・・そう思いながらも信頼はしているのだが。


「儀式なんだからやめろ。後で怒られても知らねぇぞ。」
「大丈夫ですよ〜。その辺は気を付けますって。」
「お前の大丈夫は大丈夫じゃねぇんだ。」
「大丈夫ですってば。あたしに任せてください。」


そんなことを話していると、純白の衣を身にまとった舞手が二人出てくる。
一人が深々と頭をさげた。
そして、タンと音を立てて一歩舞台の床を蹴る。
その瞬間、会場の空気から和やかさが消えた。


咲夜が一歩踏み出すと同時に白哉も動き出した。
初めはゆっくりとした単調なリズムで組手を始める。
衣装の袖がひらひらと揺れている。
ひら、ぱしり。ひら、ぱしり。


それから楽団が音を奏で始めた。
ゆっくりとした旋律。
白哉は咲夜が動くたび、周りが聖域のような清浄さに包まれていくことを感じていた。
澄んだ、荘厳な、張りつめた空気に変化していく。


旋律が乱拍子にかわる。
途端に、咲夜の動きも変わった。
ひら、ひらり、ぱしり。
ひらり、ぱしり、ひら、ひらり。
ぱしり、ひら、ひら。
白哉もそれについていく。


旋律が早くなるにつれて、咲夜の動きも早くなっていく。
そして、徐々に己が無の境地に入っていくことが感じられた。
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