蒼の瞳、紅の瞳
■ 8.準備


「して、咲夜殿は何故ここまで来たのですか?何か用件があるのでは?」
叔母上は私に問う。
その問いに姿勢を正した。
『そうだった。忘れるところだった。お久しぶりにございます、叔母上。ご挨拶が遅れまして申し訳ありません。お詫びと言ってはなんですが、こちら、酒饅頭でございます。お好きでしょう?』


「あら、ありがとう。」
叔母上はそう言ってほほ笑む。
『今日はお願いがあって参りました。』
「承りましょう。」
天音は即座に答えた。
『え?まだ何も・・・。』


「わかっていますよ。貴女のことだから、面倒になったのでしょう?それで、巫女の舞を行おうというのでしょう?」
『えぇ。その通りです。お願いできますか?』
「もちろん。そろそろ来ることだろうと思って、もう準備は整っています。・・・ただし、条件があります。」
『はい。なんでしょう?』


「・・・舞を舞うのならば、当主に戻りなさい。」
叔母上は私を真っ直ぐに見据えている。
『・・・はい。わかりました。私が不甲斐ないばかりに叔母上の手を煩わせてしまいました。すべてが終わったら、私は当主に戻ります。』
「よかった。私には当主など荷が重すぎます。」
叔母上はそう言ってまた微笑んだ。


「それは残念じゃのう。咲夜が当主に戻るならば白哉の嫁にするのは難しくなる。」
「このような阿呆が私の妻になったら、私の苦労が絶えませぬ。」
白哉がそう言い切る。
『へぇ、その阿呆の胸で泣いていたのはどこの誰だったかな。』
咲夜は小声で呟く。
「何か言ったか?」
耳聡い白哉が横目で睨んできた。
『いいえ。なんでもありませんよーだ。』


「・・・まったく、では誰が咲夜をもらってくれるのだか・・・。山本総隊長にでも誰かいないか聞いてみるかの。」
『・・・やめてくれ。浮竹や京楽の名前が挙がるに決まっているのだから。あいつらとの見合いは勘弁してほしい。面白がって、見合いの席にまで来そうだ・・・。』
咲夜はそれを想像してげんなりした。


『まぁ、その話は置いといてだな。・・・白哉、私とともに舞ってくれ。』
「・・・は?私は舞など舞えぬ。」
白哉は怪訝な顔をする。
『いや、いつもの組手でいいよ。私たちの組手は舞のように見えるらしい。浮竹が不思議がっていた。それに何かあった時、君が近くに居てくれると心強い。』


「あら、では白哉さまの分の衣装も用意いたしましょう。楽しみですわねぇ。」
叔母上は何やら楽しそうだ。
・・・まぁ、気持ちがわからなくもないが。
今は言葉に出さない。
言ったら白哉は引き受けてくれないだろうから。


「私は・・・。」
そう言って白哉は断ろうとする。
「いいではないか、白哉。」
しかし、お爺様はそれを遮るように言った。


お爺様まで楽しそうだ。
絶対に解って言っている。
まぁ、知らないのは白哉だけだからね。
『ね?白哉よろしく。』
「・・・はぁ。わかった。」
白哉は深いため息をついて、渋々頷いた。


『ふふふ。ありがとう。隊舎で舞うつもりだから山じいにも伝えてくるよ。舞を行う理由は、斬魄刀を鎮めるためとでも言っておけばいいだろう。叔母上、機材は十三番隊舎に運ばせておいてくださいな。浮竹に話を通しておくから。』
「わかりました。すぐに運ばせましょう。」
『じゃあ、私はこれで失礼するよ。また来る。』
咲夜はそういうと同時に姿を消した。
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