蒼の瞳、紅の瞳
■ 7.眩しいもの


「・・・なにをしているのですか。」
暫く嫌味を言われながら頭を引っ叩かれていると、白哉が現れた。
状況を理解したのか、呆れた顔をする。
『び、白哉!助けてくれ。お爺様が私を殴るんだ。』


「痛いものか。儂は孫をなくしたかと思うておったのだぞ。儂の心の方が痛いわ!」
そういってまたパシリと咲夜の頭を叩く。
『あだっ。』
「・・・そうですね。咲夜姉さまはもう少し痛い目を見た方がよろしいかと思います。」
白哉はそう言って、扇子で引っ叩かれている私を一瞥すると、叔母上のもとに行ってしまった。


薄情者め。
白哉のくせに。
後で絶対ルキアに過去の女装姿見せてやるからな。
いや、女性死神教会に送り付けてやろうか。
写真集にして売り出してくれるだろう。


「それで?何か言うことがあるのではないか?」
なおも咲夜の頭を叩きながら銀嶺が問う。
『うぅ、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。』
そう言って頭を下げる咲夜に満足したのか、銀嶺の攻撃がおさまった。
「二度目はないのじゃろうな?」
咲夜の目を見て銀嶺は問う。


『はい。二度としません。』
真っ直ぐとその目を見返して、誓うように言う。
「まったく、心配かけおって。・・・儂より先に死ぬなど許さぬ。」
咲夜はその言葉にはっとした。


そうだ。
この人は自らの娘と息子を亡くしているのだ。
私の母と、蒼純様を。
『本当に申し訳ありません。・・・咲夜はただ今戻りました、お爺様。』
そう言って、咲夜はもう一度、深々と頭を下げたのだった。


「・・・なんての。咲夜が生きているのは知っておったわ。」
銀嶺がしれっと言い放つ。
・・・は?この爺さん今なんて言った?
『知っていただと?私の本気の謝罪を返せ!』
咲夜は叫んだ。
「煩いのう。もう少し女らしく出来ぬのか。道理で嫁の貰い手が居ないはずじゃわい。」
銀嶺はやれやれと首を振る。


『余計なお世話だ!大体なんで知っているんだ。』
「天音殿から聞いていたのじゃ。」
『叔母上から?』
「どこぞの阿呆な孫と違って天音殿は年寄りに優しいのじゃよ。」
『誰が阿呆だ!』
「「お主(兄)に決まっているだろう。」」


くそう。
腹立つ。
なんで息ピッタリなんだよ、この祖父さんと孫は。
「まあまあ、落ち着いてくださいな。咲夜殿、お二人には先ほどすべてお話ししました。」
その言葉に咲夜の動きが止まった。


全てとは、全てか?
爺様はともかく、白哉にも?
ちらりと見た白哉は、湯呑に手を伸ばしている。
いつもと変わらぬ様子だ。


『すべ、て?』
「はい。貴女と貴女の父親、漣鏡夜の間に何があったのか。それから、四十六室とのことについても。」
「兄が生まれてから、何があり、何故姿を消していたのか。すべて聞いた。」


『そう、ですか・・・。』
正直に言えば、白哉には知られたくなかった。
私の闇など、彼は知らなくていい。
白哉は明るい道を堂々と歩けばいいのだから。


「まったく、お主は人に頼ることをせぬ。素直に朽木家に頼ればよかったものを。」
『巻き込みたくはなかったのです。当時、お爺様は隊長でしたし、朽木家とはいえ、四十六室を敵に回すのは・・・。』
「そんなものどうとでもなるわい。朽木家はその程度ではないぞ。のう、白哉。」
お爺様はそういって白哉をちらりと見た。
白哉はそれに大きく頷く。


「そうだ。それに私はもう当主なのだ。私にも兄の負担をわけろ。それを引き受けても、潰れぬほどには強くなった。兄が一人で抱えずともよいのだ。」
『・・・はい。』
そして咲夜はそう言い切った白哉を眩しそうに見つめるのだった。
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